BIZREACH DESIGNER BLOG

DESIGN × EDUCATION

事業会社がデザイナーの教育・育成に力を入れる理由

ビズリーチ CPO室でデザイン戦略の計画・推進をしております、田中です。

「デザインの力を高める年」と銘打ち、デザイン戦略の計画・導入を始めたビズリーチでは、新卒デザイナーを対象としたデザイナー研修も大きく内容を強化いたしました。

2017年度の新卒デザイナーは入社から約3ヶ月間、デザイン教育のプロである講師の方々と、デザイナーのプロである先輩メンターから、ソフト面ハード面ともにしっかり学びを深め、デザイナーとしてキャリアをスタートします。

なぜ、事業会社のデザイン組織がこんなにも育成・教育に力を入れるのか。
それは、事業会社のインハウスデザイナーとして働く、サービスデザイナーに求められるスキルの広さと深さにあります。

サービスデザイナーに求められるスキルとは

スキル

サービスに携わるデザイナーに求められるスキルは、あまりにも広域で、更にひとつひとつの深度が求められます。

IT系のサービスデザイナーにとっても、とても大切な“デザインの基礎の基礎”
データを分析・可視化し、ユーザーの体験をモデリングし、サービスの形を描く“無形なるデザイン手法”
論理的に情報を設計し、情緒的なフィードバックを形にする“インタラクションデザイン”
純粋なモノづくりの領域を飛び越えた“ビジネス的思考”

そして何よりも、それらを補いプロジェクトメンバーのパフォーマンスを最大化する“コミュニケーション技術”
共通のゴールを描き、ひとりでは生み出せないアウトプットを牽引するコラボレーションという、“高いソフトスキル”が必要です。


Tech Crunch
でDylan Field氏は以下のように述べています。

確立された教育プログラムがないにもかかわらず、プロダクトデザイナーにはさまざまなスキルが要される。コーディングや基本的なユーザー調査手法、データ視覚化技術、アプリやウェブサイトの設計に関する知識のほか、もちろんタイポグラフィーやレイアウトといったグラフィックデザインの基礎も必要になってくる。有名デザイナーの中には、教育が現状に追いつくのには数年かかるだろうと予想している人さえいる。シリコンバレーでも状況はそこまで変わらない。ハッカーブートキャンプから何百万ドルものお金がつぎ込まれた教育イニシアチブまで、全てはコーディングに関するもので、まるでデザインのことは忘れ去られているかのようだ。

出典:Tech Crunch - 過去5年間でデザイナーの採用目標が倍増――大手6社のデータに見るデザイン人材の動向

それらは、デザイナーひとりの経験と学習のみで、そう簡単に身につけられるものではありません。

個人のやる気次第、就職した会社次第、配属される環境や先輩次第……。
サービスデザイナーのキャリアを紡ぐ上で、これまでの属人的な手法に委ねることは非常に不安定で(特に事業会社においては!)、未来に求められるデザイナーを輩出し続けることは困難でしょう。

事業会社だからこそ、未来への投資を

サービス、プロダクトの領域において、次なる世代のデザイナーを輩出し続けることは、この業界の切なる課題であります。教育機関、研究機関、デザインコンサルティングファーム、ツールを開発する企業、各領域のより専門的なクリエイター……沢山の分野のプロフェッショナルが協力し、大きな流れを作る事が必要かもしれません。

しかしながら、喫緊でこの困難な課題にもっとも直面しているのは事業会社であり、そこで働くインハウスデザイナー本人達です。

だからこそ、事業会社・インハウスデザイナーが自分ごととしてイニシアチブを持ち、多様なプロフェッショナルを巻き込み、“属人化から仕組み化”への先導をする事が不可欠であると考えます。

インハウスのサービスデザイナーを抱える事業会社がデザイナーの未来に投資をし、育成の仕組み化やキャリアの開発を行っていく事で、よりリアルな課題感を持って、実践的かつ中身のある教育体系が作れるであろうからです。

選んだキャリアがデザイナーにとって後悔の無い選択となるように、ビズリーチでは「次世代のデザイナーを輩出する教育・育成の仕組み化」という構造的な課題に対して、教育の専門機関などと連携をし、いち早くチャレンジを開始しました。

デザイナー育成・教育の仕組み化の一貫として強化を開始した、新卒デザイナー研修を事例として紹介いたします。

新卒デザイナー研修でのカリキュラム事例

ビズリーチの新卒デザイナー研修では、デザイン教育を専門とする企業と連携し、美芸大や専門学校で教鞭を取る講師の方々が、3ヶ月に渡り技術面における指導を行います。

3ヶ月とはいえ、広域なスキル群を網羅し各領域の専門性を高めるのは困難です。
しかし、どのようなキャリアパスを歩み、どの領域の専門性を極めていくにもキャリアのスタートとして必要なことは、

  • デザインの基礎の基礎を“目と手に焼き付ける”こと。
  • コラボレーションの為、プロダクトマネージャやエンジニアなど他職域のメンバーとの共通言語の前提知識を、まずは薄く広くでも良いのでインストールすること。

この2点であるという仮説を持って、新卒社員向けのカリキュラムを設計をしています。

専門機関との連携はもちろんですが、新しい仕組みの初回となる今回は「On-boarding(オンボーディング)」の領域に特に趣向を凝らしています。

On-boarding(オンボーディング)の重要性


オンボーディング
は、現在HR(ヒューマンリソース)領域で人材定着・早期戦力化に対して非常に重要な取り組みとして注目を集めています。

組織の一員として受け入れられ、認められることによって、組織内におけるアイデンティティが確立され、自分の働き方や組織に対する貢献の仕方が見えてきます。 また、早期戦力化によって自身への採用判定に対するリターンを積極的に行うことも可能となります。 組織と従業員の利害関係が明白となり、お互いに貢献し合うことにより一体感が生まれ、組織への愛着度や忠誠心といったエンゲージメントが高められていくのです。

出典:BizHint HR - オンボーディング

今回のデザイナー研修でも特に趣向を凝らしたのが、このオンボーディングです。オンボーディングの設計のあり方で、新入社員の学習意欲と企業へのエンゲージメント、研修をサポートする従業員のモチベーションと一体感、講師側の教育精度や深度などに大きく影響します。

私もこれまでデザイン戦略を行う上で、デザイナー育成・教育領域においては特に数々の苦労を重ねてきましたが、経験上とても大切なのは“企業のアイデンティティを深く理解し、プログラムとして関係者全員で体現する”ことだと考えます。

ビズリーチでは新卒研修の全体感として以下を大切にしており、デザイナー研修においてもこれを体現するオンボーディングとなるように検討しました。

  • 新卒は全員で育てよう
  • 謙虚さ・素直さ・折れない心・リスペクト
  • “個”では無く“チーム”を大切に

まずは、企業のデザイン部門としての思想、研修の目的・ゴールを共有し、直属の上長が配属される部門の歴史と背景、自身のキャリアを詳しく説明。

直属の上長が配属される部門の歴史と背景、自身のキャリアを詳しく説明

最低限身に付けたい知識に関する書籍、デザイナーズキットをひとりひとりに贈呈。

(左)デザイナーズキット/(右)知識に関する書籍

デザイナーに必須となる権利関係の講座と、著作権に関連する資格試験取得のアシスト。

権利関係の講座

エンジニアのキャリアを持つ先輩から、エンジニアリングの概念やエンジニアとの関わり方のお話。

エンジニアリングの概念やエンジニアとの関わり方のお話

現場で活躍する昨年度の新卒デザイナーの先輩から、社会人としてのリアルな心得やマナーの講話。

現場で活躍する昨年度の新卒デザイナーの先輩から、社会人としてのリアルな心得やマナーの講話

全く異なる領域で活躍する社外の先輩デザイナーに講話を頂き、視野を広げるインプット。
今回お話頂いたのは、ユニークなクリエイティブで広告・ブランディング領域を中心に活躍するデザイナーGrapincoさん。

ユニークなクリエイティブで広告・ブランディング領域を中心に活躍するデザイナーGrapincoさん

自身を深く理解し、発想する力を高める為、自身の深層心理に触れるテーマでひたすら絵に起こしていくスケッチブックワーク。(なんと1週間まるまる利用!)
最後はお互いのアウトプットを開示することで、心的な距離も大きく縮まり、互いへのリスペクトが生まれます。

スケッチブックワーク

そして、新卒メンバーは自分自身の人となりを伝え、先輩メンバーとの互いの理解を深める為「自分のことをデザインで表現する」という課題制作を行い共有することで、沢山のデザイナーの先輩が新卒メンバーを理解するきっかけになるとともに、現在の自身の実力を知る事でより明確な学習目標が芽生えていきます。

「自分のことをデザインで表現する」という課題制作の様子(写真は制作中の様子)

期待の新卒メンバーは非常に自発的に、メンバーで学びを深める為のディスカッションや研修内容への提案を行い、自らチームでの勉強会を開くなどしており、その素晴らしい自主性と成長・貢献意欲に対して、オンボーディングがそれを更にアシスト出来ているように感じられます。

さいごに

次世代のデザイナーを育成・輩出出来る事業会社が日本企業で増えていけば、かならずインハウスデザイン業界、そしてサービスデザイナー全体の底上げになっていくことと信じています。
それは、日本でも多くのデザインされた素晴らしいサービスやプロダクトを世に届ける企業が増えることに近しいことでしょう。

これからも、研修をはじめとするデザイナー教育・育成の取り組みを紹介することで、日本の事業会社における教育・育成・キャリア開発領域の活性化の一助となるよう、本ブログで情報の共有を行っていければと考えています。

次回は、HTML/CSSとJavaScriptの研修内でメンタリングを行ったメンバーより、研修上での気付きの紹介を予定しています。

ビズリーチのデザイン戦略として、各専門機関と連携しながらデザイナー育成・教育の領域にも力を注いで参りますので、共感頂ける方がいらっしゃいましたら、こちらもしくは、ページ下部の「Join Us!」から是非お声がけ頂けると嬉しいです。