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「ブランド上流の概念理解から事業成長に貢献できるデザイナーになる」FICCがブランド戦略を考える際に大切にしていることとは?

ビズリーチのコミュニケーションデザイン室では、「明日から活用できる引き出し」をテーマに、デザイン業界の第一線で活躍されているさまざまな方を講師にお招きし、業務やキャリア開発に生かす勉強会をはじめました。

今回の勉強会は、データに基づく論理的なマーケティングで、ブランド戦略やデータ戦略、マーケティング戦略の戦略立案からプロモーションなどの施策実行まで一貫して提供し、消費者に価値あるコンテンツと体験を届けているFICCの福岡 陽さんをお招きしました。

講師紹介

福岡 陽 Akira Fukuoka
FICC ブランドエクスペリエンスクリエイティブ事業部 事業部長/ブランド・ストラテジスト/クリエイティブディレクター

FICCの初期メンバーで、2006年の入社以降、デザインや開発、企画など幅広く担当。Webサイトだけでなく、リアルイベントや動画広告、プロモーションやブランディングなど、いろんな役割からブランド戦略を担う。

FICCについて

初めまして、FICCの福岡です。今日はよろしくお願いします。
まずは、FICCについてご紹介させてください。

もともとはWebデザインの会社からスタートしました。その中で、キャンペーンやプロモーションの成果、効果について話すことが増え、具体的なマーケティング指針をクライアントに提供するような会社に変化していきました。

いまは、「ブランドをデジタルでリードするデジタルエージェンシー」として、戦略立案から施策実行まで一貫して提供させていただいてます。

マーケティング、ブランディングから考えるデザイン

今日は「マーケティング、ブランディングから考えるデザイン」というテーマでお話させていただきます。

今回、次のような目的を設定させていただきました。
「どんな時代でもブランド上流の概念理解から事業成長に貢献できるデザイナーになる」

皆さんは普段、ビジネススキルや、ビジネスロジックというものを学ばれていると思います。今日の勉強会では、「事業成長に貢献できるデザイナーになる」ために2つの知識を得てほしいなと思っています。

マーケティングの観点:
マーケティングの基礎を理解し、本質的な目的達成のための知識を得る

ブランドの観点:
ブランドの基礎を理解し、ブランドの価値を高める視点を身につける

そのために、今日は3つのテーマについて、概念的なお話をさせていただこうと思います。

  • デザインとは
  • マーケティングとは
  • ブランドとは

デザインとは

早速ですが、「デザイン」について、概念的なお話をさせていただきます。
なぜこんな話をするかというと、概念的なことを理解することで嬉しいことがあるからです。

デジタルデザイン の変遷

まずは、デジタルデザインの変遷についてみてみましょう。

2001年頃、Webデザインというものがこの世界に生まれて、HTMLやCSS、JavaScriptというものを勉強して、使ってきました。

アプリのビジネスがどんどん大きくなって2010年頃からUI/UXデザインというワードが出てきて、デジタルデザインの大きな領域を締めるようになりました。今、「デザイナーになりたい」という人はきっと「UI/UXデザイン」のことを指していると思います。アプリやサービスの分野でデザインを行うことが、デジタル領域におけるデザインという定義になりました。

ところが、去年2018年くらいから、国も「デザイン経営」を始めたり、「デザイン組織」というワードが出始めます。今までとは変わり、だんだん経営などかなり広い意味の言葉について使われるようになりました。

スタートアップや、アプリ、サービスが成熟期になってきたときに、「どう続けていこう」「どう推進していこう」という話になり、「デザイン経営」「デザイン組織」というのがホットワードになっていったのだと思います。

あと数年したら、また新しいワードが生まれるはずです。具体的な知識が無駄だといっているわけでは決してなくて、そうなったときに概念的な理解をしていれば、次の時代のデザインについても理解をしていけるのではないかなと僕は思っています。

ですので、今日は概念的なお話をしようと思っています。

そもそも、デザインとは?

もともとデザインの語源は“計画を記号に表す”という意味のラテン語 「designare」からきています。あくまで僕の考える定義なのですが、デザインとは「コントロールしようとする意思」、もっと端的にいうと「コントロールすること」だと考えます。

よく、アートとデザインの違いについてSNS上で議論されることが多いですが、今日、今後このことについて議論しなくていいように、私がここで勝手に定義を決めたいと思います(笑)。
アートというのは「表現」です。何かを書いたり、描いたり、叫んだり、踊る、祈るなど、何かを他者に向かって行うアクションことです。
デザイン は「コントロール」です。例えば相手に何か行動させる、考えさせる、お金を使わせる、協力させる、広めさせるということを導いてあげる思考のことです。
アートとデザインは、まったく違う次元の概念なので、対立するものでもなければ、どっちが優位という話でもないです。

「でもアートとデザインは近いものがありますよね」という人がいたとしたら、“業界”の視点で話をしているのだと思います。

例えばアート業界においてバンクシーの絵はよく、「こういうモチーフを使ったら、みんながこういう社会問題に対して意識をもってくれるんじゃないか」という社会的なテーマを伝えるためにデザインを使っています。逆に、デザイン業界ではビジネスを制御する手法としてビジュアルなどの表現を用いています。

アート業界とデザイン業界は違うけれど、目的を達成するというゴールがある以上、両者の違いに大差はなく、それぞれアートもデザインも持ち合わせていると個人的には考えます。

デザインの力と責任

ここまで、デザインとはコントロールであるという話をしてきましたが、「なんでもコントロールしていいのか?」という疑問が生まれると思います。

例えば、悪意を持って他者をコントロールすることも“デザイン”なのか?という件。悪いことに使おうとする人もいますし、デザインはコントロールすることができてしまう力なので、そういった力が悪いことに働かないように考えることも、同時に行うべきだと思います。デザインという大いなる力は、大いなる責任が伴っているという視点も、ぜひ忘れないようにしたいと、個人的には思っています。

デザインは「コントロールすること」であり、他者を変えようと試みることである、そういった概念からデザインを捉えていれば、時代が変化してもデザイナーとして対応ができるのではでしょうか

マーケティングとは

次は、このコントロールする力を使って、マーケティングというものを考えて行こうと思います。

そもそも、マーケティングとは?

いろんな定義があると思いますし、どれが正解とかはないのですが、今回はマーケティングを「市場創造」として定義します。FICCでも同じ定義で考えています。

では、市場とは創るものなのでしょうか?ビールを例にお話しようと思います。ビールの市場はすでにもうある中で、ビールの販売を伸ばしたい場合、マーケティングにおいて、2つの戦い方があります。

1つめは、強者の戦略と言われる「ミート戦略」。
端的に説明すると、同一カテゴリー市場でのシェアの拡大です。例えばビール業界のA社とB社があったとして、B社はA社のシェアを少しでも奪って売り上げをあげようとする考え方です。そのためにA社の得意な部分を真似したり、コピーしたりして、負けてない部分を多く作り出して自分のシェアを大きくしていく、真っ向から戦う地道で大変な活動です。

そうすると結局、強いものが勝ちますよね。これで戦おう、勝とうとする人は、基本的に強い人です。ヒト、カネ、時間など大量のリソースを持っている方は、下の弱い人たちからどんどん面積をとっていくというこの戦い方をします。

もう1つは、弱者の戦略と言われる「ランチェスター戦略」。
世の中強い人ばかりではなく、弱い人が大半です。ランチェスター戦略は、ベネフィットによる市場の創造です。

例えばビールのプレミアムモルツ。この競合は、普通に考えるとビールですけれども、例えばこの競合がハーゲンダッツになるかもしれないんです。それはなぜでしょう?

今日は女性の方が多くいるのでもしかしたら共感いただけるかもしれないですが、仕事帰りにコンビニに寄って、疲れた自分へのご褒美に買ってあげたいと思った時に、手に取るのがプレミアムモルツなのか、ハーゲンダッツなのか、ということです。ビールとアイスなのに、競合になるんです。このように見えない新しい市場を見つける鍵が「ベネフィット」になります。

どちらの戦略も重要で、どちらかだけあれば良いというものでもないです。大体の場合は弱者にあたるので、ベネフィットにより市場を創造していくことが大事だと、FICCでは発信をしています。

ベネフィットとは?

では、ベネフィットとは一体なんなのか。

まず、その商品が持っている「機能・性能」があります。例えばある髭剃りの商品の例をあげると、5枚歯とか、首が曲がるというのが機能・性能です。それを利用するとどんな効果があるのかが「メリット」になります。CMでよく見るのは、傷つかない、よく剃れるなどがこのメリットにあたりますね。

これを、ターゲットの視点で考えてみます。

髭剃りを買うのは中・高校生もいれば、新社会人、部下を持つ上司の方など、様々な人がいます。別の見方をすれば、お父さんなどのロールもあるかもしれません。その人が持つ、どんな人でありたいか、どのような人に見られたいか、どのような関係を気づきたいのかという、理想とする自己像や他者との関係性の視点で解釈すると、ベネフィットが見えてきます。

例えば新社会人だったら、カミソリ負けや傷がなく身だしなみが整っていて仕事ができる人にみられたいとか、お父さんだったら、娘にヒゲが痛いと嫌われない良きパパでありたい、とか。

理想の自己像や、誰とどんな関係性を築きたいのか、どんな自分を見せられるのか、それがベネフィットになります。機能的ベネフィットという言葉が使われることもありますが、それが意味するところはいわばメリットですね。

ベネフィットを考えてみる

僕がいつもベネフィットの話をするときにはバルミューダの話をするのですが、バルミューダはベネフィットの考え方がとてもうまいなと個人的に思っています。バルミューダのトースターのメリットをちょっと考えてみましょう。

トースターとしての機能・性能は、基本的なものにはトースターのタイマーや温度調整などがあります。バルミューダにしかない機能として、水をさすことができ蒸気の力でふっくらしたトーストになるというメリットがあります。そして、見た目がおしゃれでかっこいいですよね。

これをターゲットの視点でベネフィットをみてみます。このトースターがあることで、皆さんはどんな人になれますか?多分皆さん似たような答えが出ると思うのですが、「豊かな朝が過ごせる、余裕のある人になれる」といったベネフィットがあると思います。パンを焼くだけのトースターが、ここまで連れて行ってくれるんです。これが、バルミューダのトースターの優れたベネフィットです。

ベネフィットまで考えると、何を伝えるかがだいぶ変わってきますよね。ただパンがやけることだけではなく、豊かな朝を過ごせるということをイメージさせるようなプロモーションをするとか、記事やSNSの投稿などにも反映することができます。

さらに、この中でデザインはどんな役割を果たしているのかというと、ベネフィットを伝達して強化する役割を果たしています。このおしゃれな見た目が、普通の生活とは違うものが送れるんじゃないかという期待をさせてくれる、そういったことを伝達しています。水をさす容器も専用にあって、そういった儀式的なことをすることで、「今、自分は豊かな生活を送っていて、余裕のある人なんだ」と感じさせてくれます。これはデザインによるもので、こういったデザインが“認識”を変えたわけです。

デザインが認識を変えたことで、ただパンを焼くだけのトースターではなく、売る方法や、伝える方法が、全然違ってきます。

先日、お休みの時に入ったカフェで隣に座っていた老夫婦がいてこんなことを言っていました。「これから、バルミューダのトースターをみに行きましょうよ」と。彼女が欲しいのはトースターではなく、こういう豊かな時間を過ごす自分になれるモノが欲しいんですよね。ベネフィットを抑えているから、トースターが欲しい人でないひとも売り場に集まることで、市場創造ができ、そもそもの市場よりも広い市場を獲得することができるという例です。

デザインが「コントロール」することならば、デザインで「認識(パーセプション)」を変えることができるということをお話しました。

  • 興味を抱く
  • 共感する
  • 商品を購入する
  • 効果を実感する
  • 再購入する
  • 継続する
  • 周りに推奨する

体験してもいないのに、いきなり人にオススメすることはまずないと思うので、このように行動は段階的に変わっていくものだと思います。

では、これらの行動を「認識の連続的な変化」と捉えて管理することが可能なのではないかという考えでできたのが、元P&G(現クー・マーケティング・カンパニー)の音部大輔氏が考案した「パーセプションフロー」といった考え方です。

パーセプションの変化を考えよう

またビールを例にしてみます。仕事帰りにご褒美にハーゲンダッツを買っているある女性がいたとして、現状の製品に特に不満を感じていないとします。この人にできれば、ビールを買って欲しいわけです。まず、今の製品ではなく、代替製品でないと課題が解決しないということを理解している状態まで持っていきたいですよね。

そうなるまでに、その人は何かの情報に触れているはずです。それを「知覚刺激」と我々は言っています。例えば極端な例ですが、この場合であれば、製品に不満を感じていないんだけど、「本当の豊かな時間とは、香りやを楽しむことなのでは?」「他の製品ではなかなか満たせない」「泡や香り、冷たさ、すっきりとした味わいなど、五感で感じないと意味がない」というような指摘をすることで、「香りなんて意識したことがなかったな、アイスだと課題を解決できないのかも」ということを思ってもらう、などがあるかもしれません。

では、この視覚刺激で、本当に変わったのかどうか気になりますよね?それを測る効果指標としてKPIが必要になります。皆さんも普段、CTRとかCVRとか計測されてると思いますが、適切なKPIを設定します。この場合であれば、根本的な課題を理解しているかどうかを測りたいので、アンケートや、Webコンテンツの読了などから測定したりします。

パーセプションフローモデル

では、次はどこでその情報を与えられるのかについて考えていきます。

どうしても、1つのサービスや商品だけを見ていると、その中で何かを変えようと思いがちです。でも、タッチポイントってたくさんありますよね。日常のタッチポイントで、与えたい情報を知らせるには何がベストなのかを考えていきます。

カスタマージャーニーを作ったことがある人は「カスタマージャーニーでいいじゃん」と思うかもしれないですが、カスタマージャーニーは現状にみなさんに起きてる問題に対して現状から変えていくものなので、現状に当てはまらない人や、違うタッチポイントの入り方など、いろんなパターンは全部考慮しきれないんですね。

カスタマージャーニーは、タッチポイントから基本的に設計していく考え方なのですが、パーセプションの変化から考えるやり方だと、「何を今思っているか」「どんなことを考えているか」から考え、「じゃあこの情報を与えよう」「その情報を与える最適な場所はどこだろう」「その情報が当たって状態が変わったことをどうやって証明できるだろう」というように、もっと自由度の高い組み方ができるようになります。

カスタマージャーニーは1本の道ですけれども、それでは拾いきれないルート全てを網羅したい場合は「こういう行動をとってほしい」という逆転的な考え方をすることで、どんな状況にも当てはめることができ、「人(消費者)」から成果を管理することができるようになります。

それを一連の流れで管理できるのが、「パーセプションフローモデル」になります。

例に戻りますが、「五感で楽しまないと本当の癒しは手に入れられない」という問題を認知したとしても「ふーん」で終わっては意味がないんですね。そこから、「プレミアムモルツは五感で楽しむことができるのか」ということと結びつかなければならないですし、興味を持ってもらわないといけない。さらには、興味をもつだけではなくて購入してもらわないといけないですよね。

購入し飲んでもらい、満足してもらうためにはどんな情報を与えたらいいのか。ここが難しいんですよね、人間は意外と満足しないので。どのようにして、プレミアムモルツが美味しかった、もう一度買いたい、誰かに進めたいと思ってもらうか、そういったことを一連の流れで設計できるのがパーセプションフローです。

普通、タッチポイントから考えますよね。SNSだったら、記事広告だったら、などのタッチポイントありきでコンテンツを考えると思うのですが、これを逆にしたいんです。

なかなかこの説明だけで理解するのは難しいと思うのですが、重要なのは「考え方を変える」アプローチをすれば、もっと自由度が上がるということです。

例として、資生堂の「エリクシールルフレ」をお持ちしました。これにも、パーセプションフローモデルが採用されています。実際のパーセプションフローをお見せすることはできない点はご了承ください。

一部例を紹介すると、興味を持ってもらうためにバナーや広告などの施策をやり、クリックした人は興味があるというパーセプションだからKPIはCTRにしたり、ここまでスクロールしてくれた人は理解しているだろうとして、アナリティクスでの到達率をKPIにしたりしています。

本体サイトではできないようなことは、「C-CHANNEL」や「LOCARI」などの他メディアで使い方の動画を載せたり、話題になっているよねという情報を発信したり、アーンドメディア的に公式Instagramの投稿もコントロールできるように設計しています。TVCMはよく、認知のところで入れることが多いですね。「現状のままだといけないんだな」という働きをしています。バナーもたくさん作っていて、クラスタによって出し分けをしています。

全ての施策が、この1つのシートからスタートして管理することができます。

なんでこんな面倒なことをするのか。それは、事業に関わる全ての人が共通のビジネスゴールを達成しなければならないからです。

あまりにも当たり前のことですが、同じ方向を向いていないこともあります。経営者やマネージャー、デザイナー、広告製作者、社外関係者…これらの人たちが同じ方向を向いていなければ意味がないですよね。だから、1つのシートで管理することで、事業に関わる全ての人が共通のゴールに向かえるようにします。

ブランドとは

これまで、デザイン、マーケティングについてお話させていただきましたが、最後はブランドの話をさせていただきます。

FICCでのブランドの定義は「皆の中にある記憶/意味」としています。よく、「ロゴを作ることがブランド作りですよね」という話になるのですが、僕らは、皆さんの記憶の方が重要で、これがブランドの本質だと思っています。

毎回この話をするときは、カップヌードルの話をするのですが、例えばカップヌードルをリデザインすることになったとします。売り上げってどうなるでしょう?上がると嬉しいですよね。どれぐらい上がるでしょう?もしかしたら下がる可能性もあります。ではちょっと視点を変えて味を大リニューアルするとします。売り上げってどうなるでしょう?そんなに大きくは変わらないかもしれません。

では仮に、日本全土の人の記憶からカップヌードルの記憶が消えたとしたら、売り上げってどうなるでしょう?きっと、かなり下がりそうですよね。アルファベットで「CUP NOODLE」と書いてあって「おいしいのかな?」って疑問に思うと思います。これってすごくないですか?あれだけの国民食が、人々の記憶から消えたら売れなくなるんですよ。

つまりこれって、ブランドがどこにあるかということを考える一番いい思考実験だなと思っています。

コンビニに並んでたとしても、記憶になかったら買わなくなってしまうなんて、恐ろしい話ですよね。なので、みなさんの中にある記憶や意味を作っていくっていうのが、ブランドを考えることであり、ブランディングでという行いであるとFICCでは考えています。

もちろん、ロゴを作ったり、商品に何か変化を与えていくことも重要な要素ではあるのですが、記憶を作っていくことがブランドにとって一番の財産であるということを、今の例をもとに覚えていただけると良いなと思います。

ブランドホロタイプ・モデル

次にお見せする例も、元P&Gの音部さんが考案された「ブランドホロタイプ・モデル」というものです。正しくブランドを伝えることができるように、ブランドについて整理をするものなのですが、FICC BX事業部でもお仕事をさせていただく一番最初に、こちらを整理することから始めています。

施策を考える際に、「ロゴを作りましょう」「CM打ちましょう」となることがあるのですが、まずはこれを整理しないと大外しになってしまいますよ、ということをお伝えしています。なぜなら、正しく記憶が形成されなければ、ブランドの価値にはならないし、間違った方向に進んでしまうこともあるからです。そのための、確認表のような役割を果たしてくれて、ここを押さえておけばブランドとして間違いがないということをまとめた表になります。 

まずは「大義」というものから決めます。これがあることで何が嬉しいかというと、ブランドの共感の理由になるからです。共感できない人のために、頑張りたいと思えないですよね。協力してあげたいな、賛同してあげたいな、商品買ってあげたいなといったものの根本にあるのが「なんのためにこのブランドをやっているのか」という大義になります。

「ビジョン、ミッション、それに伴うバリューが大事」といったことを皆さんも普段から言われていると思うんですけれども、向かう方向性に賛同できるから、一緒にやろうと思えますよね。

大義:ブランドが持つべき目的は何か?
考える理由:活動全体の指針やブランドの共感の理由になるため

  • ビジョン:ブランドが実現したい世界は?
  • ミッション:世界を実現する上でブランドが担う役割は?
  • バリュー:役割を満たす上で重視する価値観や行動指針は?
  • ロール:企業の中でブランドがどのような役割を担っているか?

2段目は、先ほどのマーケティングの話になります。

ミート戦略と、ランチェスター戦略の話をしましたけれども、どこのカテゴリで戦うのか、どういうベネフィットを持った人たちと戦うのか、もしくは協力するのかということを考えます。

市場/競合:収益源となる市場はどこか?
考える理由:ポジショニングの明確化、新たな襲撃源の確保のため

  • 製品カテゴリー市場:競合するカテゴリーは何か?
  • ベネフィット市場:同一のベネフィットを持った競合は何か?

そして、ターゲットは誰でしょうか?ランチェスター戦略だと特にベネフィットやターゲットが重要になります。例えば何かプロモーションををやるときに、ターゲット誰ですかと聞いて「20代女性です」となりがちなのですが、それはただの属性でしかないんですね。先ほどのベネフィットでも出たのですが、「こういう人になりたい」というのがベネフィットです。

FICCでは、1番マーケティング上で反応率が高い人たちは誰なのかと言うことから考えるべきだ、しています。逆に、「20代女性」というターゲットでいい場合は、最初に言ったミート戦略の時ですね。大きく、広く、大量のお金を使ってPRを打つときはこれでもいいのですが、そんなリソースはないので、最も反応率が高い人から考えていきます。そうすると面白いもので、ヒマラヤ山脈みたいに一番トップのところから考えていくとだんだん反応する人たちが広がっていくんですよね。

ターゲット消費者:最も広告受容性(ROI)が高いのは?
考える理由:最も広告受容性、ROIが高い人物を特定するため

  • ブランドターゲット:ブランドを広める対象
  • プロモーションターゲット:マーケティング上優先すべき対象

そして、ベネフィットは何でしょう?どういった人になりたいのか、消費者の便益を考えます。

ベネフィット:消費者が得る便益は何か?
考える理由:訴求するべきコミュニケーションを特定するため

  • メリット:性能から得られる結果
  • ベネフィット:ターゲットが理想とする自己像

1番下の段は、ブランドが持っている要素になります。ブランドエクイティと言われる、ブランドの認知や、知覚品質、どれくらいブランドに対して愛情を持ってくれているのかといったロイヤリティ、連想について考えます。

連想の例でよく僕が使うのが、メルセデスベンツです。ベンツといえば高級というイメージですよね。であれば、メルセデスベンツが高級ホテル事業を始めても納得しませんか?連想があると、このように広げることができます。

エクイティ:無形資産の活用/拡大へ

  • ブランド認知
  • 知覚品質
  • ロイヤリティ
  • 連想
  • 公的/法的資産

あとは、このブランドはどんな人格かといったパーソナリティ、こういったものがあるからブランドを認識できるブランドアイコン、サービスが持っている機能・性能を考えます。

パーソナリティ
考える理由ブランド表現の指針になるため

  • ブランド自身の人格設定

アイコン:
考える理由:ブランド認知や効果実感になるため

  • ブランドを情緒的に確認できるもの

機能・性能:
考える理由:ベネフィットや市場の特定のため

  • ブランドが持つスペック

ブランドパーパス

最初に「大義」が大事ですよねということをお話ししました。最近、経済誌などで「ブランドパーパスが重要です」ということが言われています。パーパスは日本語で「大義」という意味なのですが、ブランドと大義が深く結びついてますよね、という話がされるようになりました。

どんなブランドでもこれは大事だと僕らは考えているのですが、もう少しわかりやすくすると、ブランドの存在意義が大事だなということです。

ボディソープやシャンプーなどの「Dove」を例にあげます。Doveのブランドパーパスは、女性のありのままの姿を肯定したいという大義を持っていて、数年前に作ったそれを表現するようなWeb動画が世界的に有名になりました。カンヌ広告賞でグランプリをとって、とっても大きな反響をうみました。

それを中心にして、様々なプロモーションを展開したのですが、端に「この写真は画像加工をしていません」ということを表すサインが入るようになりました。ありのままを肯定するという大義を掲げているので、加工しない画像を使うことでこのブランドパーパスをしっかりアピールしています。

もう一つ例をあげると、米ナイキによるスローガン「Just Do It」の30周年記念キャンペーンに、アメリカンフットボールの米国人スター選手のコリン・キャパニックを起用しました。

「ナイキ」のコリン・キャパニックを起用した“Just Do It”30周年記念キャンペーン広告

キャパニック選手は、アフリカ系米国人に対する人種差別的な警察の暴力に抗議し、国歌斉唱中にひざまづいたまま起立を拒否したことで、アメリカ中から批判を浴びた選手なのですが、そんな選手をあえてナイキは起用したんですね。ナイキは、何を言われたとしても守らねばならない「Just Do It」というパーパスがあるので、それに従って彼を擁護しました。この件でナイキもとても炎上したのですが、結果的に売り上げが上がりました。

このように、ブランドパーパスによってビジネスは成長するということを、元P&Gグローバルマーケティング責任者のジム・ステンゲル氏が言っています。

FICCでも聖書のように読んでいる彼の著書「GROW 本当のブランド理念について語ろう」で、社会的大義をパーパスに掲げる50のブランドが、代表的な上場企業の4倍もの成長率を実現しているという研究結果が発表されています。

いかがでしょう?なかなか信じ難いですよね、こんな精神論でビジネスが成長するのかどうか。ですが、最終的にビジネスを成長させるのは、人間だと思います。人間が事業にコミットしているから、事業は成長するわけですよね。なので、その理由を作るものが、パーパスであるということを僕たちは考えています。パーパスがないということは、共感ができないということですから、共感できない会社のために働きたいと思う人はいないですよね。

そういう人たちを繋ぎとめるために皆さんが経営者だったらどうするかというと、多分お金が出てくると思います。ですが、お金での繋がりでしか人の繋がりが維持できなくなるというのが問題です。もしこれが消費者との繋がりだったら、安売りをしなければいけなくなったり、従業員との繋がりだったら、余計にお金を払わなければいけなくなる、ということになってしまいます。

なので、パーパスがないという状態は、事業にとっても損失に繋がりますし、逆に言えばパーパスがある会社には、高度な人材が集まってくるはずということです。

任天堂のブランドパーパスの例をご紹介します。前代の社長で岩田 聡さんが考えた図なのですが、彼は「任天堂に関わるすべての人を笑顔にする」というパーパスを起きました。

このパーパスがあることで、どんな行いが生まれるでしょうか?

ゲームの会社ですから、ゲームを使って子供たちを笑顔にするといったことはもちろん、すぐ壊れるような商品を作ってしまったら子供達は悲しむだろうし、その子たちにゲームを買ってあげた親も悲しみます。ほかには、過度な課金をするようなものも悲しみますし、社内で笑顔にならない人が生まれてしまうのもよくないですよね。株主さんも笑顔になるためには、ガバナンスとかコンプライアンス的な話も出てきます。これらすべては「任天堂に関わるすべての人を笑顔にする」というパーパスが中心になって、すべての行いが決まっていくわけです。

デザインの領域も同じです。誰かを騙したり、怒らせてしまうようなデザインは、任天堂はきっとしないですよね。このように、デザインの根本には必ず、パーパスというものが存在すると言えます。

今後皆さんがデザインされる時も、ビズリーチのパーパスや、サービスのパーパスが大きく関わってくるかと思いますので、皆さんがそのパーパスを握れている状態にしてもらいたいなと思います。これを絶対裏切らないようなデザインやアクションが行われるようにするために、僕たちはこういったシートを作って、皆さんで共有できるようにしています。

そして、最終的にブランドの意味がちゃんと定着する、そして定着した先の維持の両面から考えられるようにやるのが、本当のブランドを考えることであり、ブランディングであるというふうに、FICCでは考えています。

まとめ

デザインはコントロールということをお話ししました。
コントロールということは、責任をおう行為でもあり、それだけ強い力を行使しているというある種の自信でもあるので、責任を持ちながらやっていきましょうという話でした。

マーケティングは市場創造という話もしました。
市場を奪うという考えもありますが、市場を作るということもできるんじゃないか、ということをFICCでは考えています。ベネフィットというものから、まったく製品に興味がなかった人にも興味をもってもらうことで、市場が創造できるというお話でした。

そして最後に、ブランドは皆の心の中の記憶/意味であるというお話をしました。それをちゃんとみんなが統合できている状態をつくるように、みんなで話し合って共通の目標を持たなければならないし、その目標がパーパスという話でした。

そのパーパスを共通でみんなで握っている状態で同じ方向に向かっていくことで、最終的にみんなの中に記憶が残っていくと考え、私たちはパーパスにのっとり主体的な解決を行うことが、善いデザインなのだと思っております。

おわりに

今回は、FICCの福岡さんに、事業成長に貢献できるデザイナーになるためにブランド上流の概念についてお話いただきました。

ブランドパーパスや、ベネフィットの考え方について学べたことで、さっそく業務でアイディアを出す際にその考え方を取り入れようとする動きもあり、それぞれに学びや気付きがあった勉強会となりました。

これからも定期的に勉強会の内容をお届けしてまいりますので、お楽しみに!