BizReach Designer Blog

BIZREACH DESIGNER BLOG

伝えるべきは本質と魅力。事業会社のアートディレクターが考えるコミュニケーションデザインとは。

ビズリーチでは半期に一度、活躍した社員を表彰する「BIZREACH AWARD」が開催されます。数ある賞の中で、もっとも活躍したデザイナーに送られるのが「ベストデザイナー」です。

今回は、8月に開催された「BIZREACH AWARD」でベストデザイナーに選出され、コミュニケーションデザイン室でアートディレクターとして活躍する遠嶋 伸昭に、アートディレクションをする際に大切にしていることを聞きました。

キャリアの始まりはブライダルのイベントプランナー

—— まずは、これまでのキャリアを教えてください。

学生の頃からデザインをやりたくて、アルバイトでデザイナーのアシスタントをやっていました。学生として勉強をしながら実際のデザインの現場を見ていく中で、このままデザイナーになるべきか迷うようになりました。自分が作ったもので誰かを幸せにできたらいいなと漠然と思っていたのですが、パソコンに向かって作るだけだとそれを感じることができず、自分の仕事がどんな影響を及ぼすのかを実感できる仕事に就きたいと思うようになったんです。

そんな時、たまたま結婚式場の仕事を知り、式場のイベントプランナーの仕事に就きました。そこでは式の演出や、会場の見せ方、写真撮影など、いろいろな表現を一通りやらせてもらいました。また、新郎新婦に会場の良さや演出を伝えるために、パンフレットやWebサイトをデザインしたり、写真や動画を撮影するなど、デザインの仕事も行なっていました。

自分がプランニングした演出で新郎新婦が喜んで涙するシーンを見て、演出・表現などのデザインが、人の心を動かす瞬間を間近で体験したたことを覚えています。

それから、デザイナーとしてスキルアップしたいと思い、広告代理店にデザイナーとして転職し、その後受託の制作会社に転職しました。制作会社ではナショナルクライアントの案件に多く携わり、デザイナーとしての地力が身に付いたと思います。そこで6年ほど働いてビズリーチに転職しました。

——なぜ、制作会社からビズリーチに転職しようと思ったのですか?

前職はクライアントワークだったので、基本は依頼されたものを作ることが仕事でした。その中で、こんな表現をしてみたいな、こっちの方が目的に沿ってるのになと思うことがあっても、クライアントの意向が最優先なので、受け入れてもらうことが難しかったんです。

自分でデザインの方向性を決めて、世の中にインパクトがある仕事をやりたいなと思うようになり、事業会社への転職を考えているころに、偶然ビズリーチで働いている前職の同僚に再会しました。彼女から色々とビズリーチのデザイナーのことを聞くうちに、面白そうな会社だなということと、自分のやりたいと思っていることがビズリーチでならできそうだと感じ、選考を受けました。

——ビズリーチに入社してからは、どのようなお仕事を担当したのでしょうか?

入社してすぐに、ビズリーチの山手線ジャックの交通広告や、新サービスのロゴ、キービジュアルの作成、事業に紐づいた資料作成など、様々な案件を任せてもらいました。前職でもバナーやLPはたくさん作ってきたのですが、バナー1つでも、クリック率やコンバージョン数など、以前は知ることができなかったクリエイティブの効果や影響を知ることができて感動したのを覚えていますね。

現在は、デザイナーとしてアウトプットするだけでなく、アートディレクターとして制作物の質を担保する役割を担っています。

——この半期はどんなことを担当しましたか?

たくさんやらせて頂いたのですが、その中からいくつかご紹介します。
まず、今年でビズリーチは創業してから10周年なのですが、そのプロモーションの際に使用するロゴ制作のアートディレクションを担当しました。

ビズリーチ創業10周年を記念したロゴ

モエ ヘネシー ディアジオ社とのコラボレーション企画で、10周年を記念してビズリーチの一部会員様に抽選でお送りした、ドンペリのパッケージデザインも担当しました。

10周年を記念してビズリーチの一部会員様に送付されたドンペリ
送付されたドンペリに対するSNS上で反応

「HR SUCCESS SUMMIT」で目指した、人事の仕事を誇れるような空間づくり

——この半期で特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

大規模かつ長期のプロジェクトだった「HR SUCCESS SUMMIT」が、特に達成感があり印象に残っていますね。「HR SUCCESS SUMMIT」も、アートディレクターとして携わりました。

——「HR SUCCESS SUMMIT」とはどんなイベントなのですか?

「HR SUCCESS SUMMIT」は採用・人事における成功事例から成功へのノウハウを見いだし、「ビズリーチ」や「HRMOS(ハーモス)採用」を使用する企業の皆様にそのノウハウを知っていただく機会を提供するイベントです。

——どういったところで達成感を感じましたか?

今回、Webサイトなどのオンラインだけではなく、招待状や、会場の空間デザインなど、体験に関わるクリエイティブに一貫して携わったので、やりがいも大きく、デザイナーと一緒に最後まで走りきれたことが何より嬉しかったですね。

僕自身、コンセプト設計から最終アウトプットまで携わる経験は少なかったので、実際に当日会場に行ってみて参加された人たちの盛り上がりや温度感を直接感じることができたのは、とてもいい経験になりました。

「HR SUCCESS SUMMIT」会場
「HR SUCCESS SUMMIT」Webサイト
「HR SUCCESS SUMMIT」招待状やペットボトル
「HR SUCCESS SUMMIT」ネックストラップ
「HR SUCCESS SUMMIT」紙手提げ袋
「HR SUCCESS SUMMIT」ダイジェスト映像

——いろんなものを作ったのですね…!どんなコンセプトを掲げて制作したのですか?

「HR SUCCESS SUMMIT」のコンセプトを設定するあたって、参加者に「どんな気持ちになってもらうか」をプロジェクトメンバーで考えるところからはじめました。

今回参加するのは、ビズリーチのサービスを利用する人事の方が、「自分たちがやっている採用活動は間違いじゃない」「自分たちが主役で、自分たちが盛り上げるイベントなんだ」ということを感じてほしいという思いから、コンセプトは「先進的で格式の高いイベント」にしました。

人事という仕事は、これから企業の成長を支えるため、ますます重要になっていく仕事だと思います。有名無名、企業の大小関係なく、人事の方がやられていることは派手な仕事ばかりではありません。しかし、優秀な人を採用すれば、事業が前に進んだり、企業の成長に直結する、とても誇れる仕事だと思うんです。

ですので、自分たちがやってきたことは、企業のため、社会のため、日本のためになっている、そういう認識を1人1人が持てて、自らが主人公だと意識ががらりとかわるようなデザイン、空間にしたいという思いがありました。

——そういった思いをどのようにデザインに反映させたのですか?

「先進的」で「格式が高い」というコンセプトを表現するため、2つのことを意識しました。

1つ目は「先進的」であることを表現するためテック感が感じられるように意識しました。人事にもマーケティングのようにデータやテクノロジーを活用している背景からです。特にロゴのデザインでは、無駄のない洗練されたディテールで、テック感を感じる現代風な表現にしました。

もう1つは、人事の仕事は誇りを持てる仕事だということを発信したくて「格式の高さ」を感じられるものを意識しました。グラデーションの色彩は、ここから生まれたアイディアです。

「先進的」と「格式」のキーワードを念頭に置き、デザインを行う上での軸を決めてから、キーカラーを紫に落とし込みました。紫は高貴な印象を与えるカラーであり、「ビズリーチ」と「HRMOS採用」の両サービスを活用してほしいという背景からも、ビズリーチの赤とHRMOSの青の中間色である紫をセレクトしています。それをベースに紙資料から展示物、空間全体に展開しました。

——たくさんの制作物がある中、アートディレクションで難しかった点はありますか?

今回、LPからメールのビジュアル、ペットボトルなど、媒体が多岐にわたるので、デザインがコンセプトからズレないようにフィードバックするのが難しかったですね。

例えば、ペットボトルは形状的に小さくて丸いので、可愛い印象になりがちなんです。カジュアルに見せずに、いかに品格を持たせるか。あくまでも僕はアートディレクターとして「先進的」と「格式」への軌道修正に徹して、細かいデザインはデザイナーに任せるようにしました。

「HR SUCCESS SUMMIT」ペットボトルデザイン

——当日、来場者の方の反応はいかがでしたか。

想像以上に参加される人事の方の熱量が高く、こんなにも熱い方がたくさんいるんだなと正直驚きました。この方々の熱量をもっと高めたい、この会場をさらに盛り上げたいという思いが込み上げてきて、こんなこともやれたかもという気づきもあり、次につなげたいワクワク感のようなものも感じました。仮説を立てながら作っていたデザインの効果を目の当たりして、気づきや学びが多かったです。

例えば、熱量を持った方たちは、その思いを発信、拡散したくなるんだなという気づきがありました。こちらが用意したテーマに乗っかってもらうだけでなく、みんなで人事を盛り上げていこうという思いや意識が自然と醸成されることが大事なのかなと思ったんです。その受け皿として、SNSで発信しやすくなるようなフォトジェニックな空間を作るなど、人事の方の熱量をもっと底上げできる方法があるのではと思いました。

ただカンファレンスを開催するだけでなく、どう前向きな気持ちで帰ってもらえるか。ただ参加するだけでは、とりあえずインプットしたなという感想で終わってしまうのですが、自分から何か行動を起こし、発信することで達成感や満足度が上がると思うんですよね。参加者の方がそういう体験をできるような仕組みは、大事だなと思いました。

アイデアを最大化し、どう魅力的に伝えるかに注力した島耕作とのコラボレーション

——続いて、この半期で苦労した、難しかったプロジェクトはありますか?

島耕作とのコラボレーションはすごく難しかったですね。島耕作プロジェクトは10周年記念企画の一環として、マンガ「島耕作」シリーズとコラボレーションし、島耕作の初めての転職活動を応援するキャンペーンを展開しました。

具体的には、島耕作のキャリアを記載した職務経歴書を特設サイト上で公開したり、Twitter上で「島耕作が転職するとしたらどの会社、どのポジションをすすめるか」という課題に投稿を募集しました。このプロジェクトでは、特設サイトのアートディレクションを担当しています。

——こだわったポイントはありましたか。

この施策自体は十分面白いものではあるんですが、島耕作とビズリーチのコラボレーションをどう魅力的に面白く見せるかですかね。

特に課長時代の島耕作に焦点をあてた職務経歴書というアイデアは面白かったですし、ビズリーチならではの企画でした。島耕作の職務経歴書という形でまとめられたのは初めてでしたし、彼のキャリアはビズリーチに登録しているハイクラス人材が具現化された姿になります。

そんな島耕作の魅力を伝えるため、とにかく島耕作について調べつくしました。実際に漫画を読んで、島耕作の魅力が何なのかを掘り下げ、その上で、普段とは違うベクトルの参考資料をデザイナーと共有し、また島耕作を調べてを繰り返しながら、制作を進めました。

島耕作の本質を見極めて、その魅力を伝える。島耕作を知っている人、知らない人、両者に島耕作の魅力が伝わるアウトプットになるよう、ディレクションをする上で強く意識しました。

——他に、この島耕作プロジェクトならではの苦労はあったのでしょうか。

漫画の表現には苦労しましたね。これまでのビズリーチの広告にはなかったタッチですし、そもそも作者が設計したコマ割りを組み替えるのはものすごく大変でした。

加えて、島耕作というキャラクターの世界観がすでにあったので、その中にビズリーチの世界観も組み合わせるとなると、やっぱり制約があるんですよね。島耕作の世界感とビズリーチの世界観のバランスは慎重に探りました。その探り合いは結構時間をかけましたし、みんな不慣れな中、探り探りで進めていきました。

楽しい気持ちがないと、アウトプットも追い付かない。デザイナーとの向き合い方

——この半期で遠嶋さんが意識していたことはありますか?

この半期は10周年のタイミングと重なっていたこともあり、とにかく案件の数が膨大でした。限られたリソースで、高い品質のアウトプットを出し続けることは課題でした。質を保ちながら、さらに大型の案件をこなしていくには、やっぱり自分1人の力では難しく、チームで動くことに重きを置いてました。

そのためには、僕自身が手を動かして1つのプロジェクトに注力するのではなく、マルチに、かつ、自由に動けるように、僕の中では「自分は手を動かさない」「デザイナーを信じる」というスタンスでいましたね。

でも、やっぱり自分で手を動かして作るのは楽しいし、描いたイメージを100%作りたいという思いもあるので、そのイメージをどうやってデザイナーに引き継いで作ってもらうかに苦労した半期でもありました。

——コミュニケーションでの苦労はありましたか?

コミュニケーションは難しかったですね…(笑)自分のイメージをうまく伝えきれず、アウトプットができるまでに時間を要したものがたくさんありました。

例えば、僕が目指す水準とデザイナーが目指したい水準が違ったりするんですよね。もちろんそれは経験の差もありますし、デザイナーがやりたい表現やこだわりもあります。そこをいかに僕が吸い上げて、アウトプットに落とし込むかは常に課題でした。

それでも、最初に掲げた方向性や表現のポイント、目指す水準は揺るがなかったですね。デザインの表現は任せるけど、ここまでは達成する、抑えてほしい点は明確にあったので。

それに、あくまでアウトプットしてもらうのはデザイナーなので、僕の方針を言っちゃいけないと思うんですよね。

——自身の方針を示さなかったのはどうしてですか?

デザイナーの思いを吸い上げるプロセスを経ずに、「これにしたら」「これでいいじゃん」と言うのは、デザイナーのモチベーション低下になると考えているからです。もし、答えをしっかりと示すならば、一方的に伝えるのではなく、「こういう風にしたらどうか」と話をしながら、一緒に築いていく姿勢を大事にしました。

チームとして楽しい気持ちがないと、良いアウトプットは生まれないと思うんですよね。この半期は特に島耕作のような、見た人に面白がってもらう、楽しんでもらうような案件が多く、自分もユーザーの気持ちになって面白がれないと、良いアウトプットに落とし込めないんと思うんです。

そういう意味で暗いお葬式のような気持ちだと、面白いアウトプットは出来ないし、そういうムード作りはすごく大事だなと思いましたね。大変なこともあるんですけど、最後の最後で面白いものが出来たと言えるチーム作りは、意識しましたし、今後も大切にしたいです。

長続きする広告がブランディングにつながる。アートディレクターとして譲れない2つのポイント

——先ほど目指すべき水準というような話がありましたが、デザインをチェックされる際にどこを大切にしていることはありますか?

本質を貫いたものになって期待以上の効果が得られるアウトプットになっているか、魅力的なアウトプットに見えているか、を気にしていますね。

——本質を貫くというのはどういうことでしょうか。

伝えるべきメッセージが伝わるものになっているか、広告ならば、ちゃんと広告として成り立っているかということですね。本質を貫いた広告は、長続きするものだと思っています。見た目のデザインは変わるかもしれないけど、伝えるべきメッセージ、本質の部分は変わらないので。

例え、サービスの内容が変わっても、広告の中身がユニークだったり、コピーが印象に残ると、認知は広がっていきます。それがブランディングに繋がって、広告効果が最大化されるのかなと思っています。

制作会社のころは「そのデザインがかっこいいかどうか」を判断基準に考えていたのですが、ビズリーチのような事業会社では、「そのデザインがコミュニケーションとして、広告として効果があるかどうか」に考えが変わってきました。デザインが良くても、広告として期待値以上の効果が得られるかどうかという観点で、フィードバックする内容が変わってきたなと思いますね。

——もう1つのポイントとしてあげていた、魅力的に見えているかは、どんな点をみているのでしょう?

いろんな捉え方があるので難しいところではあるのですが、僕が見ているポイントは、何かアクションを起こすものになっているか、心が動かされるものになっているか、ですね。

ビズリーチのコミュニケーションデザイン室のデザイナーは、クリエイティブを作る前に、デザインの目的やインサイト、ターゲットにどういうアクションを起こして欲しいかをクリエイティブブリーフにまとめて、デザインを作り始めます。

それに加えて、ターゲットにどういう気持ちになって欲しいのかまで掘り下げて、フィードバックするようにしています。ほっこりしてほしいのか、楽しんでほしいのか。そこまで分解して作ることで、魅力的なアウトプットになるかのかなと思います。

——そういった基準を遠嶋さんの中で持ちつつ、フィードバックしているんですね。

デザイナーが得意分野をフルに発揮できるチームを。目指すチームの姿

——これから取り組んでいきたいことや、目指すアートディレクター像があれば教えてください。

空間のデザインはすごく面白いなと感じていて、どんどん挑戦したいなと思いますね。アートディレクターとして意識したいのは、やっぱり本質をどれだけ高い精度で貫いたクリエイティブを作ることができるか、そのためのアートディレクションを強化したいなと思っています。そうすることがビズリーチのブランディングの強化につながると思っています。

——今後はどんなチームを目指していきたいですか。

デザイナーそれぞれが得意分野を活かせるチームにしたいです。ビズリーチのデザイナーは、アウトプットをするだけでなく、どうすれば事業に貢献できるのか、広い視野を持って取り組んでいるのが特徴だと思います。

事業視点を持つデザイナーは、より本質の見極めや課題解決への意識が強く、これまでにないデザイナーの形が生まれるのではと思っています。

人それぞれ得意なことがあるので、本質をとらえて、魅力を伝えることができていれば、みんなが同じデザインを作る必要はないと思うので、こういうデザイナーであるべきというデザイナー像は決めず、それぞれのデザイナーには得意分野を伸ばしていってほしいです。

みんなが得意分野を生かし、高いモチベーションを維持することで、本質と魅力を捉えた質の高いアウトプットが出せるようなチームにしていきたいですね。

——ありがとうございました!