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終わりなきデジタルプロダクトデザイン ——「UX DAYS TOKYO 2019 Conference」参加レポート vol.1

こんにちは、デザイナーの徳永です。

ビズリーチではデザイン組織内に「エクスペリエンス・センター」というチームを設置し、サービス/プロダクトの利用体験向上に関するナレッジを実践/収集/共有しながら、部署を横断して事業・ビジネスを前進させるための活動をしています。そのなかで私は、新規事業の立ち上げ期をエクスペリエンス・ドリブンなプロダクト開発アプローチでサポートしています。

今年は先進的な事例を取り入れる取り組みとして、4月5日に「UX DAYS TOKYO 2019」のカンファレンスとワークショップに参加してきました。

本記事では、「UX DAYS TOKYO 2019」のカンファレンスに参加して得られた、ユーザーをサービスに定着してもらうためのアプローチや、そのようなアプローチを実現する組織についての気づきをご紹介します。

「UX DAYS TOKYO」って?

「UX DAYS TOKYO」は「日本にいながら海外のUXが学べる日本最大級のUXカンファレンス」として2015年から続いているイベントです。

海外で活躍されているデザイナーをスピーカーとして招き、最新の取り組み事例の紹介を通じてエクスペリエンスデザインの視点やコンセプトに対する理解を参加者同士で共有するこのカンファレンスに、今年は360名以上の方々が参加されていたそうです。

2019年は「ビジネスのためのUX」というテーマで、成功できる強いチームをつくるためのセッションが複数実施されました。それらのなかでも、私が気になった2つのセッションを通じて得た学びをご紹介したいと思います。

最初の体験設計ができていれば、もう大丈夫?

1. 継続的ユーザーオンボーディング

「UX DAYS TOKYO 2019」カンファレンス最初のセッションでは、GoogleのシニアUXデザイナーであるKrystal Higgins氏による、「使われ続ける製品の為のユーザーオンボーディングの設計と思考」についてお話を聞くことができました。

セッションでは、デジタルプロダクトが現在置かれている状況から、ユーザーオンボーディングと呼ばれているアプローチの目的やゴールとは何か、といった話題が紹介されていました。

ユーザーオンボーディングとは?
ユーザーにサービスの価値や機能を説明し、操作スキルを身につけてもらうことで、ユーザーがサービスに魅力を感じ、効果的に利用できるようサポートをする一連の導入プロセスをオンボーディングという。「新人研修」という意味のアメリカ英語圏の人事用語に由来する。
出典:UX TIMES「オンボーディング」

私が着目したのは、ユーザーオンボーディングのゴールの部分です。

Krystal Higgins氏のセッションでは、ユーザーオンボーディングのゴールを「長期的なユーザーエンゲージメント」と捉えたうえで、初回チュートリアルなどの短期的なオンボーディングのみにフォーカスしてしまうことの問題について、以下のように触れられていました。

1. 1回だけ、あるいは初回だけのガイダンスで、複雑なサービスの全てを学習してもらうことは困難
2. 1つの利用シナリオに誘導して、多様なコンテキストを持つユーザーを定着化させることは困難

普段プロダクトやサービスの利用体験をデザインするなかでも、オンボーディングデザインの難しさは実感するところがあります。なかでも「長期的なエンゲージメントの実現」という部分については、サンフランシスコのヘルスケア企業コレクティブヘルス社のリードデザイナーを務めるNick Remis氏による「サービスデザインで現代的な体験の創出を」のセッションでサービスデザインの観点からも紹介されていました。

2. サービスデザインで現代的な体験の創出を

Nick Remis氏のセッションでは、サービスデザインの定義から、サービスデザインを駆動させているものとは何か、といった話題が紹介されていました。

そのなかでも、サービスと製品との違いという観点でサービスの特徴を3つのポイントに整理したうえで、顧客との関係性を持ち続けなければならないと言及されていました。

1. サービスは古くなるので “保存” ができない
2. サービスは顧客に価値を提供し続けなければならない
3. サービスは多くのタッチポイントやプロセスが統合されている

Nick Remis氏は、顧客との良好な関係性を途絶えることなく持続し構築することの大切さを、「Continuous Cycle」として可視化し、説明されていたことも印象的でした。

ユーザーは利用中のプロダクトをすぐに放棄することができるため、継続的に価値を提供し続けるための仕組みが必要であるという視点が、2つのセッションにおいて共通していたことだと感じました。

ユーザーに対する様々な思い込み

ユーザーを中心に据えたプロダクト開発アプローチは、ペルソナやジャーニーマップなど、UXデザインに関する手法群の普及によって近年多くの企業、組織で取り組まれるようになっているのではないでしょうか。

その一方で、先に述べられていたような「多様なコンテキストが存在するユーザーとの、長期的な関係性の構築」という観点においては、試行錯誤されているチームも多いように想像しています。

私が現在担当している新規事業のデザインプロセスでは、ユーザーリサーチをベースに仮説検証を繰り返しながら、価値あるコア体験をチームで設計しています。

▲ 今年登壇させていただいた勉強会で、チームで取り組むUXデザインと「エクスペリエンス・センター」についてお話しさせていただきました。興味を持っていただけた方はこちらもご覧いただけると嬉しいです。

そんななか、ユーザーオンボーディングのプロセス設計と検証を行う過程で、プロジェクトの初期フェーズに下記のような大きな失敗を経験しました。

  • プロダクトとのファーストタッチのタイミングで、すべてのユーザーに同じアクティベーションのプロセスで完了させようとした結果、多くのユーザーが脱落し、プロダクトの価値を実感するに至らなかった
  • 1度のオンボーディングで学んだことを、ユーザーは後日すぐに忘れてしまっていた

Krystal Higgins氏のセッションでも、初回チュートリアルをデザインするうえでのアンチパターンとして、「離脱不能なセットアップリストをチュートリアルとして提供してしまうことの問題」に言及されていました。

このようなチュートリアルのアプローチでは、ユーザーはただ受動的にタスクをこなすだけで、すぐに学んだことを忘れてしまうだけではなく、セットアップリストが示す利用順序がユーザーのコンテキストに沿っていない場合、そのユーザーの利用体験が妨げられてしまうことで、価値を実感する前にプロダクトを放棄してしまう恐れがある点が指摘されていました。

Krystal Higgins氏のセッション後半では、ユーザーの利用体験を邪魔せず反復的にガイダンスを提供するオンボーディングの実例として、「Google Drive」にファイルを移管する際のユーザーガイダンスが紹介されていました。

ユーザーの「ファイルをドラッグするアクション」を受けて、「これらをドロップすることでファイルがDriveにコピーされること」をインタラクティブなガイダンスとして表示することで、ユーザーを次のアクションへ導きながらプロダクトを学んでもらうことができるというものでした。

その機能を知っている人には邪魔にならず、知らない人には学んでもらうことができるアプローチとして、繰り返しガイダンスを表示することを可能にしている一例として語られていました。

ユーザーが学び続けるために、ユーザーから学び続ける

カンファレンスでは、ユーザーのコンテキストが多様化し、サービスも複雑化しているなかで「ユーザーは皆こうである」という思い込みから、初回のみのガイダンスや画一的なオンボーディングシナリオを実装してしまうことのリスクを知ることができました。

それらは、ときとしてビジネスの視点においても「ユーザーのプロダクト放棄」という大きなリスクになり得ることを再確認できたことは、カンファレンスに参加して得られた大きな学びでした。また、ユーザーの多様性を理解するためは反復的にユーザーと関わることが必要だと、改めて実感することができました。

その意味において、継続的なユーザーリサーチをベースとしたプロダクト開発と、ユーザーから学び続けるプロダクトチームのマインドセットは、ユーザーとの関係性を持ち続けるための大きな前提になってくるように感じました。

現在「エクスペリエンス・センター」として担当している前述の新規事業プロジェクトでも、継続的なユーザーリサーチをベースとしてユーザーから学び続けるプロダクト開発を、職種を横断してチーム全体で行なっています。

「コアとなる体験価値を如何に早くユーザーに実感してもらうことができるか」という観点で初回のオンボーディングを設計・検証しながら、ユーザーのつまづきをチームで学び、サービスを利用し続けてもらえるヒントとなる気づきを蓄積しています。

今回のカンファレンスでは、さらにその先の事例を知ることができたことで、担当プロジェクトにおける今後の取り組みやプロダクトアプローチがイメージしやすくなりました。

デジタルプロダクトをデザインする目的を「ユーザーとの長期にわたるエンゲージメント」と置くのであれば、その道のりも長いものとなるでしょう。長い道のりであるからこそ、デザイナーとして常に目の前のユーザーの声に耳傾けながらユーザーに学び続けることで、この先もユーザーとビジネスに貢献し続けたいと強く思います。