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本人だけにしか語れない、UX組織立ち上げのリアル ——「UX RUN! | 事業に貢献する、UX組織の挑戦」イベントレポート

こんにちは、UXリサーチャーの舘山です。

1月22日に「UX RUN! | 事業に貢献する、UX組織の挑戦」を開催しました。

UXデザインやエクスペリエンスデザインに、事業会社のなかで取り組んでいる方々は、少しずつ増えてきているのではないでしょうか。しかし、事業部とは別軸で、UX専門の組織を企業内に立ち上げて戦略的にUXに取り組むことは、まだまだ難易度が高いことのように思います。

今回は、そんなUX組織の立ち上げに約5年前から取り組みを始めていた楽天と、昨年8月から挑戦している私たちビズリーチの、これまでの挑戦から得られた知見を共有するトークイベントを開催しました。

楽天からは、UX組織立ち上げメンバーの佐藤さんと河村さんが、ビズリーチからは、CDOの田中とUX組織のマネージャー景山が登壇。イベントには、50名の参加枠に対し100名以上の方から、お申し込みいただきました。

今回は、当日おこなった4つのテーマのトークセッションの一部をご紹介します。本レポートが、UX組織の立ち上げやUX推進にあたって、何かのヒントになれば幸いです。

全体を通して「信頼」「投資対効果」「熱意ある人」という3つのキーワードが印象的でした。ぜひ、そちらにも注目してご覧ください。挑戦を始めたばかりの私たちにとっても、学びと刺激の多い会となりました。

スピーカー紹介

写真左から、田中、景山、佐藤さん、河村さん

佐藤 友哉 (Tomoya Sato)
楽天株式会社 ブランド&マーケティング戦略部 ユーザーエクスペリエンス戦略課 UX戦略グループ マネージャー

河村 征志 (Masashi Kawamura)
楽天株式会社 ブランド&マーケティング戦略部 ユーザーエクスペリエンス戦略課 UX戦略グループ CX・UXストラテジスト

田中 裕一 (Yuichi Tanaka)
株式会社ビズリーチ CDO/デザイン本部 本部長

景山 泰考 (Yasutaka Kageyama)
株式会社ビズリーチ デザイン本部 プロダクトデザイン室 マネージャー/エクスペリエンス戦略室 マネージャー

また、イベントのモデレーターは株式会社DONGURIで戦略コンサルタント/ファシリテーターを務める早川将司さんにお願いしました。肩書きはいずれも、イベント開催時点のものです。

なぜUX組織を立ち上げたのか

楽天では約5年前から、ビズリーチでは昨年8月から。それぞれ組織を横断したUX組織を立ち上げ、取り組みを開始しています。イベントの冒頭に「なぜUX組織の立ち上げたのか」について、楽天の佐藤さんとビズリーチの田中からお話させていただきました。

ここからは、各自の発言のポイントを箇条書きでまとめてご紹介していきます。

楽天 佐藤さん:

  • 会社として、これまでA/Bテスト中心のデータドリブンをもって成長してきたという認識があったが、これからはユーザー体験が大事になってくると考えていた。
  • 5年前はちょうど自分が楽天に入ったタイミングで、個人的にも、大規模な顧客志向のサービスづくりやマーケティングに挑戦し、社会にインパクトをもたらしたいと考えていた。

ビズリーチ 田中:

  • ビズリーチでは事業の多角化が進んでおり、今後の事業展開の戦略上、ユーザー体験がプロダクトの優位性になると考えていた。
  • それに伴い、会社のなかでUXデザインやエクスペリエンスデザインに関するナレッジや思想をもつことが重要になってくると考え、組織を作った。
  • 個人的にも、デザインドリブンイノベーションを日本の事業会社で実現したいと考えていて、ビズリーチならそれができると感じたので、ここで挑戦している。

UX組織を立ち上げるために、はじめにやったことは?

UX組織の立ち上げにあたって、様々な障害がありそうですが、両社は組織の立ち上げにあたり、何から始めたのでしょうか?佐藤さんからは事業部と寄り添って課題を解決していったエピソードが、田中からは経営観点で見たUXの話と信頼について語られました。

楽天 佐藤さん:

  • 最初に決めたのは、UXデザインのプロセスをフルで導入するのではなく、組織の全員がユーザーのことをきちんと理解する環境や状況を当たり前にすること。
  • 前提としてUXは、ビジネスとユーザーが重なるところに存在する。いきなり「UXデザインをやりましょう!」と難しい話をせず、事業の課題をヒアリングして課題解決のプロセスを実践し成果を出すことで、効果を感じてもらうのが大事だと考え、事業部のメンバーと一緒にユーザー調査のプロジェクトを立ち上げるところから始めた。

ビズリーチ 田中:

  • ビズリーチも同じく、現場に入り込むプロセスをとった。プロダクトマネジャーや事業長の課題を解決できる技術をもった人を送り、一緒に事業を作っている。
  • 一方で並行して、経営に対してデザイン戦略やエクスペリエンスデザインの「投資対効果」を説明していった。UXのような質的価値は、定量化がしづらいが、試行錯誤している。
  • 投資をしてもらうポイントの1つに「信頼貯金」という要素があると考えている。投資してほしい人が、きちんとコミットし続けて、信頼を獲得することが重要。
  • 私自身も入社当初、デザイナーの一人として事業のエクスペリエンスデザインを担当した。

事業に貢献するためにやったこと

信頼や説明責任の話が出たとおり、専門組織を立ち上げると「価値をきちんと出しているのか」ということが問われることになります。

UX組織が事業貢献していくためには、何が大切なのでしょうか。ビズリーチのUX組織でマネージャーを務める景山は事業部との期待値調整について、楽天の河村さんはプロジェクトで現場のメンバーを巻き込むことの大切さについて触れていました。

ビズリーチ 景山:

  • 事業部に入り込むときに、事業長が求めていることは「UXデザインの手法」なのか、「デザイナーの人手」なのか、「事業の課題設定」なのかを見極めて、期待値を調整することが重要。
  • 関係性が構築できていない状態で入っても、信頼してもらうのは難しい。最初はその部分の負荷を見積もりきれず、失敗もあった。

楽天 河村さん:

  • 事業課題は何なのか徹底的に定義する。例えば改善したいのは、新規獲得数か継続率か。
  • UXの話は理論だけでは伝わりにくいので、課題に対して「UX」とは言わずにアプローチを実践し、事業に対して貢献していった。その際、どんな細かい施策でも、開発やビジネス側も関係者全員を巻き込み、UXのアプローチの良さを実感してもらうように気をつけている。

現在のチャレンジと、今後のUX組織について

イベント終盤では、UX組織を立ち上げてから現在まで、そして今後の課題と挑戦についての話になりました。ビズリーチの景山からは、事業部で仕事をするUXデザイナーが活躍できる仕組みづくりの話が。楽天の佐藤さんからはUXをマネジメントするためのKPIについてお話いただきました。

ビズリーチ 景山:

  • 実際に事業に入っていくUXデザイナーにパフォーマンスを発揮してほしいので、メンバーが戦略的にプロジェクトをすすめていけるようなフレームワークやノウハウを蓄積し、会社にナレッジとして残るプロセスを作ろうとしている。
  • そしてUX組織が、会社に対してその知見を普及させていくためのインターフェースとして機能していくことを考えている。

楽天 河村さん:

  • 横断組織として、事業部として、経営として。様々な視点を複合して、どうアプローチしていけばいいか。一人では考えられないので、人が必要だが足りていない。
  • 社内はもちろん、市場全体でみても少ないと感じる。我々の部署にも新卒が入ってくるが、どう育てていくのかも難しいところがあって、今後、そういった育成や一緒に学んでいく仕組みを作ることも課題だと思う。
  • 同じ想いでチャレンジしてくれる熱意ある人を社内外問わず見つけていきたい。

楽天 佐藤さん:

  • UXを会社の仕組みとしてマネジメントしていくときに、UXを測定するKPIがないと仕組みとしてうまく機能しないと考え、ユーザー視点のリリースKPIを導入した
  • さらに、経営企画部門と一緒にNPS(ネットプロモータースコア)推進組織を立ち上げ、CX(顧客体験)の総合指標としてNPSを全社に展開する取り組みを2016年から開始した。

ビズリーチ 田中:

  • 事業の売上と損失だけをカウントするのでは、ユーザーの声やプロダクティビティの経済性は測れない。これは、経営観点での課題。
  • ビズリーチでも、エクスペリエンスの経済性を測り、経営のなかでエクスペリエンスデザインやサービスデザインといったものが評価される仕組みをしっかりと作っていきたい
  • また、綺麗な戦略が描けても実現できるかは、人次第。仕組みづくりや、熱意ある仲間探しをしながら取り組んでいく。

おわりに

懇親会もたくさんの方に残っていただけました

「UX RUN!」というイベント名の通り、すでに組織を立ち上げてUX実践にチャレンジしている楽天、立ち上げている最中のビズリーチともに、トライ&エラーを日々繰り返しています。

私たちとしては、これからも今回のようなUXについての知見をシェアできる場を定期的に設けていきたいと考えています。各社のUX実践へのトライ、そこで得た学びを情報交換していくことで、事業会社で同じようなチャレンジに向かってアクションを起こしている人たちの助けになれば幸いです。

また、同じような想いを持つ人たちが集まることで、業界全体の顧客価値向上に貢献できればと思っています。

今後のUX RUN!にもご注目いただければと思います。ありがとうございました。