BizReach Designer Blog

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ユーザーの気持ちとビジネスをつなぐNPS活用の挑戦

この記事は「Service Designer’s Advent Calendar 2018」の、19日目の記事です。
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こんにちは、UXリサーチャーの舘山(たてやま)です。

私は「エクスペリエンス戦略室」というチームで、UX戦略の推進を担当しています。具体的には、UXデザインの手法をはじめとするユーザー中心の考え方を事業に活用することに取り組んでいるチームです。

今回は、私が現在担当している、NPS(ネット・プロモーター・スコア)®の導入・活用推進について、そもそもNPS®って何?というお話から、推進に至った背景と今後の展望をお伝えします。私たちにとっても、まだまだ挑戦をしている真っ最中ですので、体験設計と事業の関係性に悩んでいる方に読んでいただき、一緒によりよい動きを作っていければと思います。

私のビズリーチでの仕事、社内での活動については以前社内ブログに寄稿したので、ご興味をもっていただけたら、こちらもお読みください。

広報からも学ぶ?!プロダクトマネージャーを支える部活とは

ユーザーの気持ちも、大切にしたい

私はこれまで、即戦力人材のための転職サイト「ビズリーチ」のプロダクトマネージャー(以下、PM)として求職者の方が使うサービスの改善・グロースを行ってきました。

今年の8月からは、ビズリーチ初のUXリサーチャーとして、エクスペリエンス戦略室というチームに異動して、サービス開発への感情指標の導入・活用推進をする戦略を立て、実践しています。

現在の活動に至ったきっかけは、「PM部」でのひとコマでした。
私は普段の業務と並行して、社内のPM同士で悩みを相談し、お互いを助け合うPM部というコミュニティを運営しています。ある日の相談会で、社内のPMからこんな話を聞きました。

PM部の様子

「チームのデザイナーから『この部分使いづらくないですか?』『この部分の操作イライラするんですけど』って言われて。自分も『そうかも』って思ったんだけど、そういう感覚的なことっていま目標にしているKPIと紐づけられないから、改善のための開発優先度を下げざるを得ないんですよね」

こうした話は多かれ少なかれ、サービス開発に携わる方なら見聞きしたり体験したことがあるのではないでしょうか。私も話を聞き、共感するところがあったので、PMらしく、この問題の構造を考えてみることにしました。

ユーザーとビジネスをつなぐもの

多くのWebサービスでは、売上などの業績指標と相関がわかりやすい、ログインやマッチングなどの行動データがKPIとなることが多く、PMはその数値に向き合いがちです。

もちろん、プロダクトの使い勝手やユーザーの気持ちも大切にしていますが、私の周りのPMは特に、プロダクトの数字から課題を発見し、仮説を立てるタイプが多く、数値との紐づきが見えにくいものに対して、どう向き合うべきかの課題感をもつ人が少なくない印象でした。

ですが、下の図のようにユーザーが行動する前には必ず、何かしらの体験と、行動の理由となる感情があり、PMたちが気にしている数値目標と無関係ではないはずです。

さらに、行動データからは、ユーザーが「行動した結果」はわかりますが、「行動した理由」についてはわかりません。

ビズリーチのようなマッチングサービスでは、ユーザーが離脱せずにサービスを使い続けてゴールに達することで、売上が発生します。つまり、ユーザが使い続ける理由となる「体験」をきちんと把握することが、ビジネスの観点でも大切です。

しかし、定量化されていない行動の理由や感情を、定性データのまま実際の開発現場で使うのは大変です。例えば、アンケートひとつとっても、ユーザーのどの意見を優先すべきかを決めるのは大変難易度が高く、経験豊富なPMやキャリアの長い人の経験で判断されることもあるでしょう。

ユーザ体験を定量データにすることができれば、どの体験を優先して改善すべきかを論理的に判断できそうです。こうした背景があり、「ユーザーの体験や感情を定量的に扱うことができないのだろうか」と考えていて出会ったのがNPSでした。

NPSで、ユーザーの体験を数値に

NPSの概要を調べてみると、下記のような解説が見つかります。

NPS®とは「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略で、顧客ロイヤルティを測る指標です。今まで計測が難しかった「企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるか」を数値化することで、企業の顧客との接点における顧客体験の評価・改善に生かされています。

さらに、NPSは事業の成長率との高い相関があることから、欧米の公開企業では3分の1以上が活用しているとも言われており、日本でも顧客満足度に並ぶ新たな指標として注目を浴びています。

引用:https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

NPSはユーザーの体験を数値で表すことができ、設計次第で、数ある体験の中から、ビジネス上インパクトのある体験をある程度特定できるものだと、私は考えています。また、定量データにする事で、行動データや他の指標と組み合わせて施策の優先度決定の材料にできるとも考えています。

ビズリーチサービスでは2014年から、求職者の方を対象にNPSアンケートを実施しデータを蓄積しており、その活用について試行錯誤を続けていました。その結果、近年の分析結果からNPSと業績指標の相関関係がわかってきたため、ビズリーチサービスにおける主要な指標のひとつと位置づけられることになりました。

直近では、NPSを構成する体験要素とその要因を分析し、ユーザーの課題を解決するための仮説を立てて、施策検討をはじめています

エクスペリエンス戦略室メンバーでのワークショップ。各プロジェクトで得た知見を持ち寄っています

NPSを活用したサービス開発は海外でこそ研究がすすんでいますが、日本国内の事例やノウハウはまだまだ少なく、先行して導入されている企業の担当者にヒアリングさせていただいたり、その情報を元に社内でメンバーと議論したり、私たちも試行錯誤を繰り返す日々です。

また、体験改善周りの施策は短時間で効果が出るものが少なく、勉強会を開催して社内啓蒙、理解を呼びかけるなど、地道な努力を続けています。具体的な施策や成果については、また追ってこのブログでも取り組みを共有させていただければと思います。

おわりに

事業部でプロダクトマネジメントをしていたときは、ユーザーインタビューを実施したり、お客様の声に目を通すことでユーザー感覚を体得し、プロダクトのインタラクション設計や情報設計に活かしてきました。

事業を横断するUX組織に異動して感じたのは、個々の体験設計スキルだけでなく、開発チーム全体でユーザー体験を考えられる仕組みや環境も重要だということです。

私は、今回のNPSに関する取り組みもそのひとつだと考えています。

ユーザー体験を指標として事業に取り入れることで、チーム全体がユーザー体験について日常的に考えられるようになるでしょう。また、チームのなかでユーザー体験についての議論が自然に起き、自分の仕事とのつながりを理解し、仕事へのやりがいを感じてほしいなと思っています。

これからもチームのなかでデザイナーが活躍できるような「仕組み・組織・戦略」のデザインにチャレンジしていきたいと思います。お読みいただきありがとうございました。

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さて、明日の「Service Designer’s Advent Calendar 2018」は、DeNAさんです。お楽しみに。

※NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。