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Adobe のイベントから考える デザイン、働き方、企業文化の未来

この記事は「Service Designer’s Advent Calendar 2018」の、4日目の記事です。
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こんにちは、デザインマネージャーの景山です。

ビズリーチのデザインチームでは、事業の成長を最大化し、生産性を高めることができるよう、新しいデザインプロセスや手法を取り入れ、共有しています。

今年は先進的な事例を取り入れる試みとして、すでにこのブログでもレポートさせていただいた「Service Design Global Conference」と、Adobeの先進事例が紹介されるイベント「Adobe MAX」という2つの海外カンファレンスに初めて参加しました。

今回の記事では、「Adobe MAX 2018」全体の感想のほか、セッションに参加して得られた、デザイナーの未来の働き方やデザインが活きる組織についての気づきをご紹介します。

Adobe MAX 2018 とは?

メイン会場のコンベンションセンター

Adobe MAX」は、Adobe が主催するクリエイティブ・カンファレンスです。2018年は、アメリカ ロサンゼルスで3日間開催され、世界中のクリエイター、デザイナーが集まりました。

会期中は、メイン会場での「キーノート・セッション」と大小様々なホールや会議室での「セッション」が行われ、参加者は各セッションを自由に聴講することができます。並行して行われる30前後のセッションを選択して自分なりのタイムテーブルを組み立てるのも楽しみのひとつです。

コンベンションセンターを中心に、複数の会場で行われる。近隣のホテルなど移動に10分近くかかるほど大規模。

クリエイティブの解放とそのスタートライン

Adobe MAXで発表されたAdobe Creative Cloudの最新機能は日本のAdobe Blogをはじめ、多くのメディアで詳しく紹介されています。リンクを貼りますので、興味のある方は読んでみてください。

今回のAdobe MAX全体の方向性としては、Creative Cloudを中心とした「クリエイティビティ」に関わる話題が多い印象でした。

これは、Adobe Senseiに代表されるA.I.によって蓄えられたクリエイティブグラフ(注:アプリ上でのクリエイターの意思決定をデータとして蓄積し、可視化したもの。昨年のAdobe MAXで発表された)の成果が実り、より自由なクリエイティブを生み出すための環境が整備され、恩恵を感じられるようになった第一歩なのだと感じました。また、ツールの進化が、デザイナーの働き方の変化にも大きく関わっていることを示唆しているのだなとも思いました。

内容以外の点で私がいち参加者として注目したのは、その規模や演出のケタ違いなスケールです。参加してみると、想像以上の衝撃でした。特に2日目の夜に行われた「MAX Bash」は、大きなサッカースタジアムを貸切で開催され、世界的アーティストのBeckがライブを行うなどの盛り上がりを見せました。

MAX Bash の会場。ド派手なネオン管のオブジェがあちこちに。

クリエイティビティを発揮していく未来の環境

セッションは、Creative Cloudの新機能を使った実用的なものが人気だったほか、クリエイティビティの周辺にある、働き方や企業文化の未来について語っているセッションもありました。

なかでも、私が気になった2つのセッションを通じて得た学びをご紹介できればと思います。

1. デザインに関わる働き方の未来

1つめは「The Future of Work: Trends That Will Impact Your Business and Career」と題されたセッションです。

VUCAと呼ばる未来が予測しづらい時代において、デザイナーにインパクトを与える働き方やスキルのトレンドの変化にはどのようなものがあるか。そのなかで、デザイナーが果たすべき役割は何か、といった話題が紹介されていました。

私が着目したのは、デザイナーが果たすべき役割の部分です。特に未来の変化に対応できる強いチームを作るため、クリエイティブチームのリーダーに求められる役割として、4つの要素を挙げていました。

  1. チームに必要なスキルを明確に定義する
  2. 学び続ける人財や才能へ投資する
  3. 変化の最先端にいて、新しいスキルや情報を入手する
  4. リーダー自身が、クリエイティブな才能をつなぐ存在になるよう注力する

普段、デザインマネージャーとして働いているなかで、考えていた点もありましたが、特に、1と4は意識して取り入れてみようと思う観点でした。

2. デザインが会社のカルチャーとして根付いていくためには?

Evolution of Work: How to Put Design at the Forefront of Company Culture」というセッションでは、グローバルIT企業のなかで、デザインが文化として根付くための取り組みの具体的なイメージをもつことができました。

ここでは、IBMとDropboxの発表内容をピックアップして紹介します。

IBMでは、社内におけるデザインのあり方を変革するために、5年かけて、世界中の42のスタジオにいる1,600人のデザイナーを対象に、3つのデザイン手法IBM Design Thinking, Research, Languageを開発したそうです。

この手法を通じて、デザインを、企業戦略を推進していくにあたっての「機能と表現(情緒)」の分野におけるドライバーに据えている。そうすることで、「デザインは、組織を大きく変革したり、新しいビジネスモデル、マーケットなどを開拓・可視化する機能を果たしている」とのことでした。

このようにデザインを企業推進に活かす取り組みを続けるなかで、単なる機能としてデザインを広めるだけでなく、変革のためには、企業文化へと昇華させ浸透させる必要がある、という学びがあったそうです。具体的には、下記の3つの要素で語られていました。

  • 参加と習慣化:様々なステークホルダーのいる状況に参加し、組織の壁を飛び越えてインサイトを手に入れること。またそれを習慣化していくこと。
  • 特許への貢献:知的財産としての特許に対して、デザイナーがリサーチの文脈から貢献していくこと。
  • 可視化:未来のビジョンを可視化すること。具体的には、5年以内に我々の生活に変化を起こしそうな5つのイノベーション事例を調査し、5in5として社外に発信してきたこと。

Dropboxでは、最近行ったリブランドをリードした方が事例を紹介していました。

Dropboxのリブランドでは、単なるファイルシェアリングサービスから、コラボレーションツールへの変革を目指していました。しかし、リブランド以前の社内には、スタートアップ特有のカルチャーはあったそうですが、「デザイン・カルチャー」というものはなかったそうです。

カルチャーとしてあったのは「信頼」という価値観で、いたるところでその重要性が語られ、会社の1番の価値として認知されていました。

そうした状況もあり、新しいブランドをカルチャーとして浸透させていくのは難しいと思われていましたが、信頼感を大切にするために、全社にすべてのデザインプロセスを見えるようにすることで、これを乗り越えたそうです。細かいフィードバックや、うまくいかずボツとなった案までも共有したことで、デザイナーに限らず、様々な人が新しいブランドのデザインプロセスに巻き込まれる状況を作ることに成功しました。

しかし、上手くいくことばかりではありません。このプロセスのなかで、社内インタビューを進めていくと、多くの人が仕事の進め方に非常に疲れていて、いわば燃え尽きているような状態にあることがわかったのです。

さらに調査と分析を進めた結果、仕事の目的や意味づけがしっかりしていて、楽しめている状態にあるほど、クリエイティブ・エナジーを発揮できることがわかりました。

調査結果をうけて、よりやりがいのある働き方をデザインするために、スキルシェアをしてみたり、同僚に花をプレゼントしたり、ミーティングをしない水曜日を作ったりなど、たくさんの施策にトライしたそうです。

「Design process is our power.」。Dropboxでは、デザインプロセスは会社を変革するために力強くはたらくものである、という仮説にもとづいてプロジェクトに取り組んでいました。組織にデザインプロセスへの参加を促すことで、結果としてユーザー中心なソリューションを探すためのクリエイティビティを高めることができる。という締めが印象的でした。

どの事例もセッションのタイトルの通り、デザインが企業文化の最前線に立つという、野心的なものでした。デザインを企業活動に活用する取り組みに挑戦している私たちにとっては、デザインを全社員のものとして捉え、企業戦略とともに機能させている先行事例を聞くことができ、とても励みになりました。

おわりに:今後のデザインな企業文化

普段マネージャーとして、組織や文化づくりに取り組んでいる身としては、具体的なデザインのTipsや技術ノウハウに留まらず、事業づくり・組織づくりといった観点の事例紹介があったのはとても勉強になりました。

デザインがどのような存在・役割で企業活動に貢献できるのか。具体的な事例を聞いたことで、デザインのリサーチ手法やアイデアをカタチにするチカラ、課題解決のプロセスをもっと活用し、企業文化の浸透や働きがいのある組織を作ることに貢献できる余地が大いにありそうだと改めて感じました。

社内で、クリエイティブ・エナジーを発揮したり、イノベーションを促進することができるデザインプロセスをもつことで、よりデザインが文化として組織に根ざしやすい状況を作れると感じることができるセッションでした。

特に、デザインプロセスによる可視化を社内のカルチャーにしていくことは、事業会社において重要だと感じます。私の所属しているプロダクトチームでも、プロトタイピングに非デザイナーを巻き込むことに取り組んでいますが、その先の事例を聞くことで、見通しがクリアになりました。もっとクリエイティブ・エナジーを発揮したり、イノベーションを促進できるように、デザインが文化として組織に根ざしやすい状況を作れると感じました。

デザインプロセスは、デザイナー以外のひとも実践できるものです。それを文化にすることで、より強力にデザインをはたらかせることができるのだと思います。まずは、デザイナー自身の使命を果たしながら、今後の事業を通じた課題解決や、企業の文化形成にも貢献することができればと強く思います。

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さて、明日の「Service Designer’s Advent Calendar 2018」は、チャットワークさんです。仮題は「ChatWork のデザイン部について」。お楽しみに。