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事業・サービス開発をデザインで最大化する先進事例とは ——「Service Design Global Conference」参加レポート

こんにちは、デザインマネージャーの景山です。

ビズリーチのデザインチームでは、事業の成長を最大化し、生産性を高めることができるよう、新しいデザインプロセスや手法を取り入れ、共有しています。今回は、サービスデザインにおける世界の先進事例が紹介されるService Design Global Conference(SDGC)に参加して得られた内容をご紹介します。

サービスデザインとは

「サービスデザイン」といってもまだなじみがない方が多いかもしれません。サービスデザインとは、サービスの質・顧客体験の向上の為に、サービスに関わる有形・無形の構成要素を表現・プランニングし、漠然としがちなサービスの価値を視覚的にわかりやく表現し、実現させていくものです。アウトプットとしては「サービスブループリント」などの形で表現されます。

1990年代からヨーロッパを中心に世界中に広まっている考え方で、最近は日本でも取り組みが聞かれるようになってきました。調査から、顧客の価値定義、ビジネス設計、体験設計、タッチポイント、ソリューション提案、導入にいたる過程の中で、様々なデザイン手法を使い、領域を横断してサービスの価値を高めるために行うデザインです。

Service Design Global Conference(SDGC)とは

私が10月にアイルランド・ダブリンで参加したService Design Global Conference(サービスデザイングローバルカンファレンス。以降SDGC)は、下記のようなイベントです。

Service Design Global Conference(SDGC)は、国際的なサービスデザインの啓蒙組織であるService Design Network(SDN)により開催されているグローバルミーティングです。世界22カ国のローカル支部でのサービスデザインの取り組みやナレッジを共有・表彰する場として、2008年の開始以降、毎年開催されています。
引用元: https://sdgc18redux.peatix.com/?lang=ja

2018年はアイルランド・ダブリンで「Designing to Deliver」というテーマを掲げ、概念的な構想をするだけでなく、構想のサービス組織への導入、既存の業務プロセスとの協調、人間らしくあるサービス・世界、エネルギー業界のサービスデザイン、IoTを含んだサービスデザイン、新しい感情指数の話など、実際にどうやってサービスデザインを実践するかという発表が多様な視点でなされました。国際色も豊かで、ヨーロッパのみならず、アジアからブラジルまで参加者も非常に多様性のあるカンファレンスでした。

私は全部で17件のセッションに参加しました。以下は、その内容です。

  1. New Kids on the Block (Lorna Ross | Fjord )
  2. Delivering Meaningful Result for Citizens (Tim Lucey | Cork County Council)
  3. An Agile CX Transformation: getting ahead by harmonizing two mindset (Peter Brook | Adidas & Anna-Loiusa Peeters | Livework
  4. Service Design & Project Management: Friend or Foes? (Jean Paradis Zachary | Publicis. Sapient)
  5. Lean into Lean (Tim Macarthur | Vesizon Connect)
  6. Start with Delivery, Not Theory (Jess Leitch | Idean UK)
  7. 24 Success Factors for Brilliant Implementation (Tina Weisser | Feed your mind & Birgit Mager | KISD)
  8. Service Design Award Ceremony & Presentation
  9. Four Principles for Humanizing the future of work (Stefan Moritz | Veryday)
  10. Three Elements in Motion ( Emma Fromberg | Ellen MacArthur Foundation)
  11. Let go of Your Ego: Orchestrating Progress through Competitive Collaboration (Patrick Quattlebaum | Harmonic Design)
  12. Servicing A Sea Change (Cathy Tobin | Virgin Voyages)
  13. 5 Lessons to Control Data (Dan Hayden | TTC Labs
  14. Beyond Personas: Design of services by smart agent (Santiago Echeverry Gonzaleza Antwerpes AG)
  15. Beyond NPS - Why the ‘silver bullet’ CX metric misses the mark (Katie Monteith | PwC & Marie Serrano | Ontario Public Services)
  16. The Architecture of Change (Alberta Soranzo | Lloyds Banking Group)
  17. Doing is the hard part (Jakob Schneider | More than Metrics & Markus Hormeß | WorkPlayExperience)

この中で、私が気になったものをご紹介できればと思います。

構想されたサービスプランを導入していくアジャイルなCX活動に関して

アディダスさんのオムニチャネルご担当の方がCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)の導入支援をしているLiveworkさんと共に発表していたセッションです。アジャイルとCXを統合した活動を行うために、共通認識を徐々に作り上げながら設計し、導入していく事例を紹介していました。

スピード感のあるアジャイルと顧客中心の手法を統合しながらチームに導入するに当たって、

  1. 夢と現実
  2. 速さと遅さ
  3. スケーリングと最適化

この3つの大きな相反する項目をバランスさせてプロジェクトをすすめることが、チームが新しい価値観を理解して機能するために必要だと紹介されていました。チームをさらに価値を生む体制に導くにあたって、実際に導入を進めている彼らの貴重な意見だと思いました。一見当たり前に思えるのですが、観点として明確にこれらを意識するのとしないのでは大きな違いが生まれると感じました。

サウスウエスト航空のデジタルサイネージのデザインとプロトタイプ

企業部門で賞をとっていたEPAM Continuumのサウスウエスト航空のデジタルサイネージの改善発表です。全社のリブランディングの際に、まず、ユーザーから従業員に至るまでインタビューを行い、体験に対して変えるべきことを洗い出したこと。その内容から表示をデータから人間の認知しやすい内容に変え、最終的に実際の空港サイズのプロトタイプも作成したこと。また、空港内でのテストも300,000人規模のテストを7週にかけて行い、96%からポジティブな評価をもらい、5段階でも4.77という高評価を手に入れたという内容でした。旅行客だけでなく従業員へのインタビューまでも取り入れた課題抽出の実践の視野を広さ、課題からの仮説を丁寧に検証し、結果的に定量的に高評価を得ているという点、実践されたアウトプットの質においても参考になると感じました。

詳しくは上記資料の52〜66ページを参照してみてください。

感情指標であるNPSの次の指標とは

PwCさんがオンタリオ州の公共サービスと試驗運用しているCX metricsのワークショップに参加しました。体験における重要のな指標を、Shared Valueとしてユーザー側と企業側で出し合い、その全体のジャーニーの中で、重なる部分Key moments から改善の変化が分かる定量的な行動指標を定義するというものでした。NPSは、事業会社での実践可能な体験・感情指標として認知が進んでいますが、このワークショップでの指標は、その応用編と捉えることができました。ワークショップでは、手法をステップごとに分けて説明されて理解しやすかったです。また、サービスの中でのNPSの実践において、NPSの位置付けがクリアになる内容でした。

自分たちの事業での実践へ

紹介された事例には、具体性が高いものが多くありました。特に、他の事業会社内で実践された事例に関しては、日々のデザインの取り組みの中で、ユーザーの体験への調査の再定義や、業務プロセスの改善、デザイナーとしてのキャリア設計などに活かせる部分があると思えました。

一方で、自社での取組みを振り返った際に、今までの取り組みが事業やサービスの価値を高めるためのものであったという事にも改めて確信をもちました。小さな改善と大きな改善をバランス良く取り入れていくことで、継続的にサービスの改善を進められるのだということもわかりました。

今後のサービスデザインへの取り組み

先行事例を学ぶことで、デザインがサービスの価値に貢献できるという確信が持てたことが、このカンファレンスに参加したことの一番大きな学びだと考えています。デザイン戦略の柱のひとつであるエクスペリエンス戦略室を通して、事業の価値や課題の見えにくい部分を、デザインの力でクリアにすることを目指していきます。

また、事業フェーズにかかわらず、プロダクトやコミュニケーションは、タッチポイントを広く意識することで設計できる体験は大きく変わります。結果として組織を変えることで価値を生むような場合にも、知見として生きる内容がたくさんあるなと感じましたし、今後は状況に応じてこれらのことを意識して取り組んでいきたいと考えています。

11/9にはSDNの日本チャプターが主催する報告会が開かれますし、私も近いうちに社内で報告・共有する予定です。今後も一歩ずつ、ビズリーチでサービスデザインの実践に挑戦していきます。