BIZREACH DESIGNER BLOG

こんにちは、デザイナーの MoQ です。

中国は今や、テクノロジー × デザインの分野において世界を先導する存在になりつつあります。例えば、スマートフォンを利用したインタラクションやユーザーに関するビッグデータの取り扱いにおいて、さまざまな先行事例があるでしょう。しかし、この分野の現状や予測される未来についてまとめられた研究レポートは多くはありません。

そこで今回、『2018 Design & A.I. Report』の発信を通じて、「デザイン × 人工知能」という切り口で、この分野についての考えをより多くの人に伝えたいと考えています。この記事では、本レポートの中国語版、英語版、日本語版を制作した3名が「デザイン × 人工知能」が世の中に与える影響や未来について話し合った座談会の様子をお伝えし、この考え方を広められたらと願っています。

なお、それぞれの発言は各国や特定の組織を代表するものではなく、「デザイン × 人工知能」に注目している各個人の考えや感想に基づくものです。不十分なところがあれば、読者のみなさまと一緒に議論し、考えたいと思います。

『2018 Design & A.I. Report』とは?

人工知能がビジネスに活用されはじめた現代、デザインのもつ想像力やエモーショナルな側面は、より重要になっています。このような時代においてデザインは、人工知能と人間らしいクリエイティブを繋げるような役割を担っていくことでしょう。そしてそれは、人工知能が人間の仕事を代行するという単純な話ではなく、もっと深く複雑な関係になっていくことを示唆しています。

「Design & A.I. Report」は、学界の文献、技術資料、ケーススタディの定性・定量分析、専門家へのインタビュー、トレンド予測、労働力再分配の観察、教育革命の話題など、多様なトピックを横断して集約した、「デザイン × 人工知能」のこれからを考えるためのレポートです。2017年版では機械知能とデザイン領域の取り組みを紹介・実践しました。今回発表された2018年版では、より複雑なエコシステムに着目したレポートを読むことができます。また、この『2017 Design & A.I. Report』は、John Maeda氏の『Design in Tech Report 2018』にも引用されています。

この度、私は、2018年版の日本語訳を担当する機会をいただきました。このレポートが、デザインと人工知能のインターディシプリナリー(複合学科)を構築したり、より多くのデザイナーが人工知能の時代を前向きに迎えるための一助になれば幸いです。

レポートのダウンロードはこちらの記事からどうぞ

座談会参加者

範 凌(FL)

『Design & A.I. Report』作者。Tezignの創業者及びCEO。ハーバード大学出身、同済大学「デザイン&人工知能研究室」室長。世界経済フォーラムにおいて「2017 Young Global Leader」に選出された。

燕 晓宇(Sharon)

ニューヨーク コロンビア大学の哲学部卒業。ビジネスマネジメントの仕事をするかたわら、デザインとテクノロジーの変革に注目しており、今秋MITに入学予定。2018年に『Design & A.I. Report』の制作、英語版の翻訳に参加。

李 元杰(MoQ)

株式会社ビズリーチの UI/UX デザイナー、マネージャー、ダンサー。上海交通大学コンピューターサイエンス修士。生活やデザインにおけるテクノロジーの影響に注目。小学生時代からデザインツールに興味を持っている。『2018 Design & A.I. Report』の日本語版制作を主導。インタビュー記事はこちら

A.I., Design, Future

インターネットとデザイン。人工知能の衝撃

Sharon: MoQさんはなにがきっかけで『Design & A.I. Report』を見つけたんですか?

MoQ: 趣味でDesign × Computer Scienceの領域に関心を持っていて、普段から関連情報を探しています。ある日、TezignのSNSで2017年版のレポートを見つけたのが始まりでした。読んでみたら、面白く、展望性もあって。それ以来ずっと、このレポートに関心を持っています。

読んだ後に、中国語を話せるデザイナーの同僚何人かと話をしました。彼らも2017年のレポートを読んでいたのですが、コンピューターの知識がなかったり、人工知能に対する理解が浅い方にとってはわかりにくいと感じていました。

多くのレポートは、文献を調べれば理解できます。ですが、このレポートは理解できるまで色々と苦労しました(笑)。多くの関連する文献を読んでも、理解できたのは一部だけでした。

Sharon: 当時はもう日本にいたんですか?

MoQ: はい。2013年に日本に来て、今は5年目ですね。

FL: 今、MoQさんのチームが取り組んでいること、あるいはMoQさんご自身の日本での経歴の中に、デザインおよび人工知能との関連を感じる部分はありますか?

MoQ: はい、あります。私は、以前からITプロダクト開発、Webのフロントエンド開発に注力してきました。

そんななか、昨年10月の双十一(編注:ネット通販のイベント)の時期に、Alibaba社の人工知能ソフトウェア "LuBan" が1.7億枚のバナーを作成しました。そしてコンバージョン率を100%向上させました。私はこのデータに衝撃を受けました。

ここで私が気づいたのは、人工知能の領域の中で、UIデザインのパターンと、一部のフロントエンド・プログラミングの構造化が進んでいて、構造化できるものは人工知能によって自動化も可能になるということです。将来、アプリやプラットフォーム上で、UXデザイナーあるいはプロダクトマネージャーがユーザーフローとユースケースを設定すれば、自動的にバックエンドのAPIと繫がるUIがアウトプットできるようにもなるでしょう。

今のデザイナーの仕事が将来は必要なくなるかもしれない、と思うと怖いです。

FL: 非常におもしろいですね。私は、UI/UXやインターネットと関わるデザインは、すべてのデザインの中で最も構造化に適した基礎を持っていると考えています。私達の研究の中でわかったのは「デザインをどうやって定量的に表現するのか」が一番難しい、ということです。この「定量的デザイン」という領域においては、日本の研究は先進的です。例えば感性工学や認知計算といった領域での研究は、欧米より遥かに進んでいます。日本人が論理を求めることが原因かもしれません。「これがいい感じ」と言いたがらず、物事を明確に表現します。なので多くの日本のデザイナーは、ノーコンセプトを主唱することが多いです。例えば隈研吾の負ける建築やザハの脱構築主義といった、問題解決的な手法です。

日本はずっとロボットと人工知能に強い関心を持っていますが、MoQさんに聞く限りだと、体系的に人工知能とデザインの関係性を学ぶ学部や学科はなさそうですよね。ロボットや自動化に関する研究室があるのに、なぜ人工知能とデザインに関する研究科がないのでしょうか?

MoQ: 個人的には、日本人の職人気質な面が影響していると思っています。

レポートの中で、そのような研究科が、大学のコンピューター科学系の学部、もしくは美術や芸術の学部にあるのかについて書かれた文章を見ると、数多くの大学がそのような領域の専攻課程を設立したようです。例えばMITと中国の清華大学では美術学部に専門的な課目が設けてあり、個人的には結構先進的な取り組みだと思っています。

以前、京都大学の学生が、機械学習を用いてWebデザインのレイアウトを生成する卒業制作をしている話を聞きました。このようにプロジェクト単位で、複数の領域をまたいだ研究をしていることは少なくないようですが、例えばMITや中国の清華大学のように体系的に研究を進められる大学や大学院を私は知りません。

人工知能あるいは工業デザインやグラフィックデザインという分野における研究は、日本が進んでいると自分は思います。

FL: なるほど。

MoQ: 1つの事に注力し、究明するまで複合学科に手を出せないのではと思います。人工知能や工業デザイン、グラフィックデザインといった特定の単一分野における研究は日本が進んでいると思いますが、複合する2分野のどちらも究めていないと、複合領域の研究は発展しにくい。たとえば日本の建築と計算設計はとても強く、そのため建築分野の中には系統的な計算設計の研究も存在します。

なので、「デザインと人工知能の繋がり」を提唱する前に、日本のインターネット業界におけるデザインの発展について述べさせてください。ここは最も人工知能化しやすいデザイン分野だと思います。

まず、1つめは「人口構造」。日本では少子化及び高齢化が進行しており、企業がターゲットとするユーザーも高齢者に偏りがちです。過去10〜20年のサービスデザインのユーザー群は30歳以上、そして40歳、50歳以上になります。そのため国際的に流行している新しいものには追いつけず、保守的なものや古いものも多いです。たとえば今、日本の会社では、一部でまだ「ガラケー」とよばれる携帯電話を提供していますが、中国やアメリカではこのようなサービスはもうすぐなくなります。

2つ目は「デザイン自由度」。日本ではお客様を第一に考える精神が根付いているため、たとえば取引先から「これは良くない」というフィードバックがあった場合、お客様の意見を重視して、デザインに反映することが多いように感じます。デザインの自由度、という点で見ると日本は中米両国より低いのではないでしょうか。

3点目は「言語習慣」。日本語には外来語が多く、文法や語彙も比較的長めです。そのため日本語でなにかを表現しようとすると、必要文字数は多くなります。中国語では基本的に4文字以内で表現できます。言語の習慣からみると、中国語はすべて簡略化するのを重視し、日本語は親切な説明を重視しているため文字数が多くなります。デザインにおいて考慮しなければならないことが多くなり、ユーザーはより大量の情報を受け取ることになります。また、考慮すべき文字が多い分デザインのスピードは中米より少し遅くなっています。

上記より日本のITデザインはまだ発展途上のため、複合学科への研究には注力できないのだろうと考えています。

FL: なるほど、面白い日本人は職人気質で慎み深い探究心を持っているため、例えば最高のグラフィックデザインや最高の人工知能というような、特定の分野における研究はよくできる。その反面、そういう慎み深さがあるからこそ、多分野にまたがる研究は発展していない、ということでしょうか。

MoQ: はい、そう感じています。そして「倫理観」という考え方が存在しています。
デザインという仕事をするには匠の技が必要で、必ず「人」がやらなければならない、と一般的には認知されています。なので「デザイン × 人工知能」について、後ろ向きな考えを持っている人もいるでしょう。

FL: これはいわゆる「カーブでの追い越し」があると思います。中国は、人工知能に多くの投資をしてきた背景には、グラフィック分野において経験豊かな国に勝てないという理由もあったように思います。そのため、人工知能を用いたデザインやモバイルのUXデザインを深めてきました。組み合わせによって効果を生み出す方法は中国の得意分野ですね。

データとデザインの価値

Sharon: おふたりは、「デザイン × 人工知能」の分野に、国の政策も影響していると思いますか?

FL: 中国には、人工知能についての国家戦略があります。人工知能もしくは機械知能そのものがデザインと関連付けられたら、次の2つのことが起きると思います。

1つめは、デザインの価値が定量化されることです。例えば、良いデザインが会社にどれだけのビジネス価値をもたらすか計測できるようになるでしょう。

2つめは、デザインがデータを生み出すこと。これからの時代、未来の核心となる資産は「データ」です。この核心となる資産と関わるものだけに付加価値があります。言い換えれば、デザインがデータを作る力があってはじめてデザインの価値を証明できるようになる、とも言えます。

人工知能とデザインが関連付けられれば、もっとデータを活用したデザインが生まれたり、人々の行動からデータを作り出すこともできるでしょう。今までは1人のデザイナーが人生経験を積まないとできなかったデザインが、データを入力するだけで生成できるようになるかもしれません。

そうすると今度は、どれだけのデータを処理できるかが重要になります。これからの時代、職人的なデザイナーによって一部の限られた人のために作られていたデザインが、LuBanやデータに基づいた知的デザインによって、一人ひとりに最適化された結果を得られます。人工知能の力で個性によるニーズを満たすデザインができるのです。デザインがデータを作り出し、データを処理するようになる。デザインが、データを作り処理するまでを担うことで価値となる。それが中国が「デザイン × 人工知能」に取り組んでいる理由だと思っています。

MoQ: 日本も人工知能に関する取り組みを、特に社会課題を解決するために推進しています。例えば、高齢化、人材不足、地方活性化などの分野です。しかし、学際的な研究に関しては日本は慎重なように見えます。研究資源が限られていることも一因でしょう。こうした背景から、技術戦略を優先する傾向が続いており、「デザイン × 人工知能」については優先度が低いように感じます。

もう1つ私が感じるのは、国の政策や文化が企業活動に与える影響についてです。例えば、私の知る限りですが、LuBanは同様のコンセプトで開発されている日本のツールと比較して、圧倒的に処理速度がすぐれていると感じます。

FL: それは、データや処理速度の他に、開発の目的の違いが大きいのではないでしょうか。

MoQ: 開発の目的、ですか。

FL: はい。Alibabaの目的は、自社が持っているデータの再利用です。

そもそも、Alibabaは膨大なデータを自社で持っています。ところが、大量の消費者データを持っているにも関わらず、なぜ皆が同じバナーをみているのか、という課題意識がありました。そこで、「自社の持つデータを活用できるようにしよう」という目的を掲げ、LuBanを開発しました。LuBanという人工知能は、1,000人のユーザーに対して1,000パターンのバナーを作りました。重要なのは、グラフィック性ではなく、適切な時間に、適切な場所で、そのユーザーに適切なバナーを見せること。そのため、大量のデータを高速に扱うことは必須でしょう。

これが例えば、自社サービスを提供している企業でなく、エージェンシーのようにクライアントの生産性向上を目的とする企業だったらどうでしょうか。データを蓄積する機会があったとしても、利用の仕方は変わってくるのではないでしょうか。

Sharon: 確かにそうですね。FLさんがおっしゃった目的のお話から、ジャストアイデアですが、考えを1つ思いつきました。

LuBanが開発された背景は、消費を促すためのグラフィックスの最適化とのことでしたが、日本社会においては、過剰に消費を促すような動きが好まれないのかもしれません。であれば、Alibabaのように個別最適化を促進することの優先順位が低くなって当然です。こういった社会の特徴も、「デザイン × 人工知能」の分野の発展スピードに間接的に影響するのではないかと考えました。

FL: 良い観点ですね。私から見ると、中国は成長市場で、人工知能が価値を生みやすいと考えられます。一方、日本は先進国であり、経済成長が単なる数値の増減では測れません。なので、経済成長を目標としていない概念、例えば「断捨離」があります。断捨離は、もともとデザインの変遷のなかで生まれた概念とも言えます。レポートでは言及されていませんが、私達はかなり断捨離という概念に影響されています。ここまでお話ししてきた通り、人工知能はデザインをつくることができますが、その一方で、「人工知能ならなんでもできる」という楽観的な思考に陥りがちです。それに対し、断捨離の概念を生み出したデザインが、その楽観的思考に対してどう批判的な視点を持つのか。批判的な視点を通して、経済成長としての数値を追求するだけではなく、断捨離のような新しい概念をインストールすることができるでしょう。

人工知能 とデザインのよりよい未来のために

Sharon: MoQさんはどうですか?日常生活や仕事では、どのシーンで「人工知能 × デザイン」を感じられていますか?

MoQ: 人工知能と日本の日常生活や仕事は、まだ少し遠く感じます。

レポートの中で一番印象に残ったのは「脳機比」の章にあった、中等程度の自動化で、クリエイティブ業務のニーズ変化を示した図です。中国とインドはランキング1位、2位で、70%程度の増幅がありましたが、日本はマイナス4%。日本は生産力が足りないと感じました。

レポートでは、人工知能は単に人工知能領域だけで発展するのではなく、他の全ての領域と共に発展し、そうすることで生産性に一つのサイクルが生まれると書かれていました。しかし、日本では人工知能を使ってUIやフロントエンドを自動で生成できたとしても、その前後のプロセスに対応できる人がまだ多くないように思います。人工知能に、誰が正確なニーズを提供するのか、誰がバックエンドと繋げるのか、誰がマーケットを拡大するのか。自動で生成したアウトプットに対応できる十分なチカラがないために、日本では「デザイン × 人工知能」のニーズは多くなく、ビジネスの現場に浸透しづらいのではと感じています。

FL: なるほど。MoQさんの観点は、人工知能が10億枚のバナーを作っても、そのあとの転換に人が必要だということでしょうか。

MoQ: はい。人工知能を活用した生産活動において、その前後のプロセスでは「知能化」ができなくても、せめて「自動化」しないといけません。Alibabaは10億枚のバナーを作って、自動でECサイトで活用しました。しかし、日本で同じことができるのか。そもそも、国労働力人口、人件費、あるいは大規模データベースの対応力など、あらゆる条件が違います。

もう1つ、人工知能との距離が遠いと感じる要因が、文化と理解です。東京は日本の中でもマナーに厳しい都市のひとつだと感じます。例えば、電車や公共の場で電話することはマナー違反です。誰も電車で「Hey, Siri」と言わないですし、スマートフォンや腕時計に声をかけることを恥ずかしく感じる人も多いです。

FL: 今、文化と理解という話が出ましたが、その点から言うと、人と機械の間にもっとたくさん自然なインタラクションを発生させるためには、機械が文化を学ぶ必要があります。文化を定量化することはデザインを定量化することと一緒です。そしてもし、「デザインは文化の1つ」という認識ができれば、とても有意義になるかもしれませんね。

今日お話してきたテーマはとても面白いですね。要するに、日本における人工知能は特定の領域内にのみに注力しており、中国の人工知能はデザインの中にあるということです。

MoQさんから見て、今日お話ししたテーマの中でも特に日本の現状と関係がある話題はどれでしょうか。

MoQ: 「脳機比」ですね。

各国のITビジネス需要の変化を見てみると、日本は自動化されたロボットを含む人工知能においては世界をリードしていますが、人工知能やデザインなどの学際的な研究は非常に弱い。これは私にとってとてもショックなことです。私もFL先生もこの点をずっと疑問に思っていました。

「脳機比」のグラフは、デザイン前後のプロセスが知的であることと、デザインにおける知的さには価値があることを示しています。デザイナーはコンピュータを長い間使用していますが、本質的にこれらのデザインプロセスは「データ」にはならず、アプリケーションを通じてのみデータにできます。そのため、デザインプロセス全体をデジタル化する方法を考える必要があると思います。

FL: 非常に良いアイデアですね!

MoQ: ところで、FL先生が同済大学で人工知能とデザイン分野を研究することになったきっかけは何だったのですか?

FL: 私はアートが好きだったのですが、理工科に入りました。当時は、アートと技術のどちらを専門として学ぶかずっと悩んでいたんです。しかし研究しているうちに、どちらか一方を選ぶ必要はないことに気付きました。同時に、私のようにアートと技術のどちらにするか迷う人がたくさんいることにも気付きました。例えばMITのメディアラボに、そのような人が多く集まっていましたね。

そんな私達が信じていることが2つあります。1つは、デザイナーがデザインする方法、それ自体がデータに変えられるということ。 もう1つは、デザインがそのデータが使用されるシーンを変更できることです。この考えに至ったとき、データとデザインの両方を極限まで研究するべきだと思いました。だから私たちは「デザイン × 人工知能」分野のこの研究室を設立して、デザインを、データ、アルゴリズム、ネットワーク、クラウドコンピューティングなどと組み合わせたのです。それぞれにどのような関係があるかは、これから改めて研究する必要がありますが、それらを組み合わせた研究は続けられなければならないと思います。

このような取り組み、研究を通じてこそデザインに新しい活力が生まれます。言い換えると、デザインは人工知能を「生き生き」させられる。アプリケーションの話だけでなく、体系的な整理も必要でしょう。レポートにまとめることもこの整理のひとつです。

より多くのデータを学習することによって、人工知能が最適化することはわかっていますが、なぜ最適化するのかはわかりません。だから、現時点では、人工知能とデザインに対する初歩的で基礎レベルの質問をすることには価値があると思います。このレポートによって、読んだ人が我々の観点に共鳴してくれたらとても嬉しく思いますし、そのような人々は人工知能とデザインに関連する分野の限界を打破できるようになると信じています。

Sharon: 素晴らしい観点ですね!

MoQさん、このレポートはコンピュータについての背景がないと理解しにくいと、さっき言いましたよね。実は私もアメリカのプログラマーの友人達にこのレポートについてちょっと聞いたんです。すると、それとは逆に、彼らはこのレポートの技術面はあまり深くないと感じていました。このようなフィードバックを踏まえてて、来年のレポートはより深く書くか、あるいはより平易に書くか、どちらがいいと思いますか?

MoQ: 目的によります。観点を提示することが目的であれば、インデックスを付与して、それを通して読者がリファレンスをチェックできる形式が役に立ちます。このレポートを通して知識や観点を広めることが目的であれば、わかりやすいようにより平易に書く必要があると思います。

FL: 他の文献を辿ることのできるインデックスであるうえに、教科書のように誰もが理解できる方がいいと思います。それを読むには思考力が必要で、多くの副読本やリファレンスを見る必要もあるでしょう。

また、教科書のもうひとつの重要な価値は、そこに書かれていることに興味を持った人々が、知識や観点の発信者になれることです!例えば今回、このレポートを読んだMoQさんは、会社や周りの関心のあるパートナーに影響を与えてくださいました。そしてさらに、そのパートナーが知識や観点を他の人に広めることもできるのです。

MoQ: そうですね!

FL: 最後になりますが、『2018 Design & A.I. Report』の日本語訳をしてくれて、ありがとうございました。

MoQ: こちらこそ、このような機会をいただき、ありがとうございました。私に加え、「キャリトレ」チームの中国語がわかる同僚2人が協力してくれました。筑波大学のインダストリアルデザインの修士で、現在はインタラクションデザインに取り組んでいるRuiruiさん。もう1人は、上海交通大学を卒業したJoeyさんです。彼女はアメリカで心理学とデザインを学んだりMITで授業を受けた人物です。私からもこの場を借りてお礼を言いたいです。ありがとうございました。