BIZREACH DESIGNER BLOG

こんにちは。求人検索エンジン「スタンバイ」のアプリデザインを担当している戸谷です。

今回は、「事業に活かせるUXデザイン実践」という記事シリーズの第2回をお届けします。

「事業に活かせるUXデザイン実践」シリーズでは、日本最大級の求人検索エンジン「スタンバイ」のアプリチームで取り組んでいる、UX デザインを事業成長に活用する試みについて、実際の例を交えながらお届けしています。
前回の記事では「リサーチ編」として、UX デザインの手法を導入するに至った経緯と、KA 法を使った体験価値のマッピング手法についてお伝えしました。

事業に活かせる UX デザイン実践 リサーチ編

今回の記事では「ToBe 編」として、リサーチをもとに「理想のプロダクト」とはどういったものなのかを考えていきます。

全体の流れ

前回の記事と重複するところですが、今回の取り組みの全体像を、もう一度ご紹介しておきます。

  1. 既存のビジネス戦略・方向性の確認
  2. ユーザー調査、体験価値の抽出

  3. 体験価値、ユーザー像のモデリング
  4. UX コンセプトの設定
  5. 理想の UX の視覚化
  6. 評価
  7. 実装

前回は「1. 既存のビジネス戦略・方向性の確認」「2. ユーザー調査、体験価値の抽出」「3. 体験価値、ユーザー像のモデリング」の部分を取り上げ、事業の現状整理と、人々が仕事探しをするなかでの体験価値をヒアリングベースでまとめました。

今回は、まとめた体験価値をもとに UX コンセプトを導き出し、理想の UX を視覚化する「4. UX コンセプトの設定」「5. 理想の UX の視覚化」の部分を実践していきます。

価値マップをもとに、ブレないアイデア出しを

ここからは、体験価値をモデリングして作成した価値マップをもとにして理想の UX を考えていきます。
スタンバイの場合には、既にご利用いただいているプロダクトや既存のアセットがありましたが、コンセプトのリフレーミングを目的としているため、一度改めて、ゼロからコンセプトアイデアを考えていくことにしました。

今回のステップのゴールは、理想の UX の指針となる「UX コンセプト」の策定です。まずはじめに、UX コンセプトの種となる「コンセプトアイデア」を出して議論を発散させていきます。コンセプトアイデアは体験価値をベースにどんな体験を提供できるサービスにしたいのか、を考えたアイデアです。様々な視点からアイデアを広げるために開発メンバーにも協力してもらい、アイデア出しを行いました。前回の「2. ユーザー調査、体験価値の抽出」でヒアリングした内容と、「3. 体験価値、ユーザー像のモデリング」でまとめた価値マップの概要を伝えたのち、個別に体験価値を読み込んだり、少々議論をしながら、それぞれアイデアを挙げてもらいました。


(コンセプトアイデアのフォーマット)

最終的には下記のようなアイデアをはじめ、8つのアイデアが出ました。
ここから、UX コンセプトの種にするコンセプトアイデアを投票によって決定します。投票の方法は、単純にそれぞれがユーザーとして共感できるものかどうかを投票し、多かったもの選びました。その他にも、「自分がユーザーだったら使いたい」「自分たちが企業として提供したらウケそう」「開発の実現度が最も高い」といった切り口でひとり3票をもち投票を行う方法もありますが、スタンバイの場合はすでに既存のプロダクトがあるため、票の種類を分けるメリットがあまりないと考え、前述の方法にしました。


(挙げられたアイデアの一例(実際に採用されたものとは異なります))

はじめはアイデア出しにやや苦戦をしましたが、価値マップを一緒に読み込んでいくことで、普段開発しているだけでは感じにくい、人々の行動に対する気づきも得ることができたのではないかと思います。また、どのアイデアも、実際のヒアリングをベースにした体験価値に基づいているため、大きな軸がブレにくいのと同時に、現状の機能に捉われないアイデア出しが可能なフレームワークであると感じました。

UX コンセプトの決定

UXコンセプトの決定には、「UXコンセプトツリー」を用いました。
UX コンセプトツリーは本質的な体験価値に紐づくかたちで、その下に「タッチポイントでの体験」「どうやって実現するか」「キーとなる満足要因(KSF)」「具体的な提案」とブレイクダウンすることで、大きな幹となるコンセプトを軸に、機能や実現手段を考えられるフレームワークです。


(UX コンセプトツリー)

コンセプトの種として出したアイデアの元となった体験価値を、上位の「本質的体験価値」として設定して、その下にアイデアを整理していきます。今回はアイデアの偏りを避けるために、ヒアリングで最も多く聞かれた体験価値と2番目に得票数が多かったコンセプトアイデアも本質的体験価値として設定し、その上位に全体を包括する「UX コンセプト」を設定することにしました。ツリーの例を下記に掲載します。


(UX コンセプトツリーの例(本記事向けの例です))

コンセプトに基づいた ToBe の設計

ここからさらに、UX コンセプトツリーの作成時に出した本質的体験価値を満たす手段・手法の部分を具体化していきます。アプリを使う前〜使い始めるときの接点、さらに使っている最中や問題解決後の様子なども含めたカスタマージャーニーマップやストーリーボードを作成してイメージを膨らませていきます。このときに、余計な要素が入り、コンセプトとズレた流れになったり、本質的体験価値を満たせなくなることを避けるように気をつけましょう。


(ストーリーボードの例の一部(本記事向けの例です))

体験の流れが描けたら、それらを具体的な機能要件に落とし込んでいきます。ストーリーボードの各コマを並べ、そのコマでユーザーが「どうせ〜なんじゃ?」「でも、〜でしょ?」と感じるような、予期されるネガティブな事象を並べていきます。

ひと通り洗い出せたらそれをいい意味で裏切るアイデアを考えます。このアイデアはひとつの課題に対して複数あっても構いませんが、あまり大きい粒度にならないように注意が必要です。あまり大きいと、コンセプトアイデアがもうひとつできてしまうくらいの粒度になってしまいます。

各アイデアが書き出せたら、ユーザーの行為のゴール、サービスを利用する目的達成のゴール、サービスでユーザーが行うタスクに落とし込みます。 こうした一連のプロセスを踏むことで、本質的体験価値からブレることなく、具体的なサービスのタスクまで分解することができまます。


(ストーリーボードからタスクを分解する際の要素)


(ストーリーボードからタスクを分解した例(本記事向けの例です))

ここまでできたら、ストーリーを満たす MVP(Minimum Valuable Product)をプロトタイピングしていきます。あくまでも、本質的に体験価値を満たすための必要最低限の構成になるように気をつけ、軸がブレないようにします。現状のプロダクトやアセットがある場合には、それに引っ張られたアイデアやプロトタイプになりがちです。しかし、今回は現状の見直しが目的ですから、あくまで、調査から導き出した UX コンセプトを軸に考えることが大切になります。

今回は体験価値をベースに、理想のプロダクトを考えていく部分についてお話ししました。次回は、今回出していったアイデアやコンセプトの確度を検証していきます。